シンポジウムパネラー発言3 「利益を導くビジネスプランの確立を」 桑田 良輔(2010年4月24日)

シンポジウム「電子書籍産業の検証―コンテンツ流通、デバイス、知財ビジネス」 パネラー発言3

 利益を導くビジネスプランの確立を

桑田 良輔 (プロジェクトファーイースト)

  何をやるにしても1社というのは、良くないことですね。アメリカでは、ソニー・リーダーに触発されてアマゾンがキンドルのビジネスモデルを作り、アップルがiPadで、Googleがコンテンツで挑戦しています。ここまでくると、出版社も電子書籍の価格を引き上げるなど健全な競争になってきます。

 しかも、4社のビジネスモデルが違うので、非常に個性的なお店が4店あって、お客さんが使い分けるように成熟しています。では、日本でも 同じようなことになるかと考えると、難しいと感じます。

 上記4社と対抗するには、ソニーやパナソニックのような製造業と、有力出版社や巨大印刷会社の様なコンテンツ編集・加工業者、そして三つめのファクターとして楽天やヤフーなどのe-コマースの企業が加わって勢力を作る必要がありますが、それぞれの利害関係があり、なかなかそのようにはならないでしょうね。

 また、一方であまり多くの企業がバラバラに参入すると日本として力が削がれるので、できればソニーとパナソニックとが一緒になるとか、大日本と凸版が組むといった、これまでなら考えられないようなことをやっても良いのではないでしょうか。そうやってこの国の財産を守ろうとすることは、別におかしなことではないと思います。それくらい強烈な波が向こうからやって来ていることは事実です。

  また、アマゾンは常に世界と英語圏の市場を頭に置いて計算しています。そう考えると、日本は不利です。

 私は、文字の文化を力で破壊することに前向きではありませんが、そうした、規模の経済が働く世界になってくるということを念頭に置いた場合、まず日本連合としては一つか二つの勢力に結集して、「黒船」に対抗すべきです。そしてその勢力は日本の市場に甘んじることなく、迅速に、海外にも出るべきです。

 日本の多くのメーカーがそうであるように、出版も海外に出て欲しいと思います。

 また中国も注目すべき国です。チャイナーモバイルは契約者が5億人おり、その会社が年末までに16社の電子書籍端末を揃えて商売を始めるそうです。さらに、海外にも大きな華人社会がありそこもターゲットにしているので、非常に大きなアドバンテージがあると思います。

 中国は、国家の強力なリーダーシップのもとに一つにまとまりやすく、アメリカの場合は自由競争で強者が勝ってまとまりやすい。それに対し て日本は、どちら付かずで、まとまりにくいですね。

 資本主義が万能とは思いませんが、色々な国を見て来て思うのは、水は高いところから低いところへ流れるという事実です。せき止めて何とかしようとしても無理です。私が言いたいのは、その流れをうまく自分の利益に導くように、ぜひ、ビジネスを作っていただきたいということに尽きます。