出版産業の成長率とGDPの推移
グラフは、出版科学研究所の『出版指標年報』のデータを基に「出版産業の成長率とGDP」の比較をExcelでグラフ化したものである。
なお、国内総生産GDPは、内閣府「国民経済計算年報」各年版「暦年(名目)」による。70年以前は、国民総生産GNPの暦年(名目)。
出版は、不況に強い産業であると一般に言われているが、全体を通じて感じることは、日本経済の状況を強く反映しており、「不況に特に強い」という状況はない。
1973年の石油ショックの後、出版は、「定価値上げ」の影響もあり、他産業より「不況に強い様相」を示しているが、この10年間で見ると、日本経済の落ち込みより、出版の落ち込みが大きく構造不況の様相を呈している。
雇用環境の悪化、賃金の低下などデフレ不況感が強く、さらにはインターネットの影響など本や雑誌が売れない状況が続いている。
1972年の「ブック戦争」とは、日書連(日本書店組合連合会)と書協(日本出版書籍協会)との間で、春以来、話し合われていた「正味改定」をめぐる協議が不調に終わり、9月1日から12日までの12日間、日書連の加盟書店で、「一部の出版社の商品を取り扱わない」という出版史上、初の「書店スト」に突入したことをいう。
また、1973年の「石油ショック」とは、中東戦争の勃発を契機に、石油規制が行われ、「用紙不足」が異常な状況を呈し、市中では「トイレットペーパーの買占め」まで行われた。
希望する用紙は「手にはいらず」、しかも、「前年の2割から3割5分高」の「出版物の用紙不足」という非常事態に、書協は、「戦時下における用紙統制を思い起こす」と当時の通産大臣に要望書を提出したくらいである。
用紙不足と値上がりという「二重苦」は、結果として、「定価の値上がり」となり、売上の対前年比は、「二桁上がり」と皮肉な結果を示したが、その後の読者の「低価格化思考」に拍車をかけ、現在に至る「長い出版不況」の引き金となった。
(文責:出版メディアパル/下村昭夫)