第33回日本出版学会賞 (2011年度)
第33回日本出版学会賞の審査は,日本出版学会賞要綱および同審査細則に基づき,2011年1月1日から12月31日までの1年間に発表された,出版研究の領域における著作を対象にして行われた。審査委員会は,2012年3月4日から4月8日までの間に3回開催された。審査は,古山悟由会員が作成した書籍と論文の出版関係著作リスト,および会員からの推薦(アンケートによる)を資料として実施された。
最終的に審査対象となったのは,以下の2点である。
佐藤郁哉・芳賀学・山田真茂留『本を生みだす力――学術出版の組織アイデンティティ』(新曜社,2011年2月15日)
枡居孝『日本最初の少年少女雑誌「ちゑのあけぼの」の探索』(かもがわ出版,2011年10月15日)
『本を生みだす力』は,社会学や経営学などの知見と方法をもって学術出版社の活動――出版社がどのように学術的知を育て,社会に送り出しているか――を解明しようとする,10余年にわたる共同研究の最終報告書である。
本書は560頁以上の大部であり,真に労作である。しかしながら,本賞とするには説得力に欠ける。かといって奨励賞とするには,共著の研究が相応しいか疑問である。
『日本最初の少年少女雑誌「ちゑのあけぼの」の探索』は,貴重な仕事であり新見もある。しかし,考察が拡散し深みに乏しいことから,授賞対象には不十分である。
以上から,第33回日本出版学会賞は該当作を得ることはできなかった。