第27回日本出版学会賞 (2005年度)

第27回日本出版学会賞 (2005年度)

 日本出版学会賞の審査を終えて

 2006年度の日本出版学会賞は,春季研究発表会において報告しましたように,残念ながら受賞作なしでした。
 今年度は,書籍としては,湯浅俊彦著『出版流通合理化構想の検証――ISBN導入の歴史的意義』(ポット出版),中野三敏編『江戸の出版』(ぺりかん社),丹和浩著『近世庶民教育と出版文化』(岩田書院),大貫真樹著『製本探索』(印刷学会出版部),石塚純一著『金尾文淵堂をめぐる人々』(新宿書),小泉弘著『デザイナーと装丁』(印刷学会出版部)が候補となりました。
 また論文としては,『一橋論叢』780号の特集,共同研究報告書として,芳賀学「学術界と出版業界の制度的関連構造に関する文化社会学的研究」,川上隆志「編集者論序説:出版の現場から」(現代文学会),日下幸男「近世仏書版本の研究」などが候補となりました。
 審査委員会では,これらの候補ついて検討しましたが,書籍部門における『江戸の出版』は「季刊江戸文学」の近世出版特集の合本であり,『製本探索』,『デザイナーと装丁』は出版研究というカテゴリーには入らないということで,湯浅,丹,石塚氏の著書が残りました。
 このうち,湯浅氏の著書は,ISBN(日本図書コード)導入の経緯を出版業界紙の記事で再構成した労作ですが,現在の視点から対立構造の分析が要求される。丹氏の著書は,「往来物」の研究だが,今までの成果はよく押さえられているが,あまり深みが感じられず,説得性にやや欠ける。石塚氏の著書は,既存の活字文献を集めて総合化した伝記だが,もっと掘り下げが欲しい。
 以上のような理由で,書籍の受賞はなく,論文における共同研究については,執筆者によって論文の質にバラツキがあることが指摘され,対象外となりました。

  日本出版学会賞審査委員会
  委員長 植田康夫

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