1.概況
1969年3月に設立された日本出版学会は,創立から44年をむかえ,新たな時代への歩みを進めている。これまで設立の理念と志を尊重し,円滑な研究者の交流や情報交換をおこない,研究成果の発表のために,学会誌や会報の発行,研究発表会や各種の部会活動,そして国際出版研究フォーラムへの参加を継続的におこなってきた。
これらが可能となったのは,何よりも学会を構成する会員の方々の努力と,経済的な支援をはじめ様々な便宜をはかっていただいている賛助会員の方々のご協力の賜物であり,ここに改めて深甚なる感謝の意を表したい。
2013年度における日本出版学会の活動は,それまでの研究や人的交流の蓄積に基づいて着実に進められ,出版研究に対する関心は一層高められた。
今年度の春季研究発表会は,2013年5月11日に日本大学法学部三崎町校舎で開催した。参加者は140名であり,6名の研究発表および「雑誌ジャーナリズムの明日――チャンスかピンチか?」と題した特別シンポジウムがおこなわれた。
また,秋季研究発表会は,2013年10月26日に関西学院大学大阪梅田キャンパスで開催され,27名の参加者で,6名の研究発表と矢部敬一氏(創元社)による特別講演がおこなわれた。
2.会員数
正会員 334名
賛助会員 法人 43社
準会員 1名
名誉会員 2名
(2014年3月末日現在)
3.総会
2013年度総会は,2013年5月11日(土),東京都千代田区の日本大学法学部三崎町校舎において121名(委任状を含む)の会員が出席,2012年度事業報告,同決算,同特別会計決算,2013年度事業計画案,同予算案,同特別会計予算案をそれぞれ審議・可決した。
なお,第34回日本出版学会賞は,下記のとおりである。
【日本出版学会賞奨励賞】
岡村敬二『満洲出版史』(吉川弘文館)
牧野智和『自己啓発の時代――「自己」の文化社会学的探究』(勁草書房)
4.理事会
2013年度の会務をおこなうため,2013年度総会から本総会に至るまでの間,理事会を下記のとおり開催した。
第1回: 2013年7月22日
第2回: 2013年9月10日
第3回: 2013年12月9日
第4回: 2014年2月3日
第5回: 2014年3月17日
第6回: 2014年4月21日
第7回: 2014年5月17日
5.調査研究委員会
調査研究委員会は,主として各部会間の連絡調整にあたった。各部会の活動状況は次のとおりである。
(1)学術出版研究部会
今後の研究課題,部会運営について検討をおこなった。
(2)雑誌研究部会
2013年7月23日(都立工芸高校)「デジタル雑誌における「書誌情報標準化」の最新事情――日本国内及び米国の状況報告」丸山夢人,小野寺尚希(出版技術・デジタル研究部会共催)
2013年9月27日(日本大学法学部三崎町校舎)「日本における「ピーター・ドラッカー」の受容と展開――雑誌メディアと流行に関する一考察」牧野智和
(3)出版技術・デジタル研究部会
2013年5月25日(研究社印刷)「辞書印刷の技術とジョンソン『英語辞典』異版を見る――研究社印刷見学」小酒井英一郎(出版史研究部会共催)
2013年7月12日(日本大学法学部三崎町校舎)「近現代出版物の製本構造について――本を解体してみる」田中栞(出版史研究部会共催)
2013年7月23日(都立工芸高校)「デジタル雑誌における「書誌情報標準化」の最新事情――日本国内及び米国の状況報告」丸山夢人,小野寺尚希(雑誌研究部会共催)
2013年9月6日(丸善日本橋店)「西洋の造本装丁――ワールド・アンティーク・ブック・プラザ見学」渕野智弘,関直行(出版史研究部会共催)
2013年9月28日(研究社印刷)「辞書印刷の技術とジョンソン『英語辞典』異版を見る――研究社印刷見学」小酒井英一郎(出版史研究部会共催)
2013年11月1日(ハイテクセンター)「中西印刷の技術的変遷――活版からオンラインジャーナルまで」中西秀彦
2014年3月26日(ハイテクセンター)「大和綴じ(綴葉装)実習――折丁構造の和装本を作る」櫛笥節男
(4)出版教育研究部会
2013年9月26日(日本大学法学部三崎町校舎)「雑誌文化論の視点から出版教育を考える」富川淳子
2013年11月28日(日本大学法学部三崎町校舎)「出版メディアの集合的記憶を伝える」清水一彦
2014年2月24日(日本大学法学部三崎町校舎)「知り,考え,パースペクティブをもつこと――本と出版の現在」柴野京子
(5)出版経営研究部会
2013年4月15日(日本大学法学部三崎町校舎)「独禁法と出版産業」小室尚彦(出版法制研究部会共催)
2014年3月4日(文京シビックセンター)「雑誌経営の現状と課題――サブスクリプションコマースからの提言」西野伸一郎
(6)出版史研究部会
2013年5月25日(研究社印刷)「辞書印刷の技術とジョンソン『英語辞典』異版を見る――研究社印刷見学」小酒井英一郎(出版技術・デジタル研究部会共催)
2013年7月12日(日本大学法学部三崎町校舎)「近現代出版物の製本構造について――本を解体してみる」田中栞(出版技術・デジタル研究部会共催)
2013年9月6日(丸善日本橋店)「西洋の造本装丁――ワールド・アンティーク・ブック・プラザ見学」渕野智弘,関直行(出版技術・デジタル研究部会共催)
2013年9月28日(研究社印刷)「辞書印刷の技術とジョンソン『英語辞典』異版を見る――研究社印刷見学」小酒井英一郎(出版技術・デジタル研究部会共催)
2013年12月3日(八木書店)「カッパ・ブックスの時代」新海均
2014年2月15日(上智大学四谷キャンパス)「大阪屋号書店・再考――外地/内地を結ぶ書物流通」日比嘉高
(7)出版編集研究部会
2013年11月19日(日本大学法学部三崎町校舎)「『週刊読書人』と私の50年――エディターシップと「知」の創生」植田康夫
(8)出版法制研究部会
2013年4月15日(日本大学法学部三崎町校舎)「独禁法と出版産業」小室尚彦(出版経営研究部会共催)
2014年3月27日(日本大学法学部三崎町校舎)「出版界のこの1年を振り返る――日本雑誌協会の倫理法制に関わる活動を中心として」渡辺桂志
(9)出版流通研究部会
2013年11月12日(八木書店)「電子「書籍」の再販について考える――公正取引委員会への異論」鈴木藤男
(10)関西部会
2013年6月27日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「板木研究の現在――到達点と課題」金子貴昭
2013年7月24日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「『満洲出版史』とその周辺」岡村敬二
2014年3月12日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「出版史研究の手法を討議する その1――戦前の週刊誌の連載小説の変遷を探る」中村健
6.プログラム委員会
総務委員会と調査研究委員会によって構成される合同委員会を開催し,研究発表会の企画・運営に当たった。
(1)春季研究発表会(2013年5月11日,日本大学法学部三崎町校舎)
〈研究発表〉
1.「雑誌ジャーナリズム復権に向けた調査報道の意義と可能性――出版文化存続への一考察」大重史朗
2.「雑誌『明星/Myojo』とその読者像の変遷――読者ページの分析を中心に」田島悠来
3.「戦時下(1938年~1945年)の「理想的な少女」像――『少女倶楽部』『少年倶楽部』の表紙絵の分析を通して」中川裕美
4.「『経営出版学』の可能性」主藤孝司
5.「エルンスト・ロヴォールトとロヴォールト出版社」佐藤隆司
6.「機械可読性の視点から見た,組み版と出版の変容」中西秀彦
〈特別シンポジウム〉
「雑誌ジャーナリズムの明日――ピンチかチャンスか?」藤田康雄,中川淳一郎,島田真,三重博一,塚本晴二朗
(2)秋季研究発表会(2013年10月26日,関西学院大学大阪梅田キャンパス)
〈研究発表〉
1.「明治初期の京都における新聞・雑誌の発行元に関する一考察――木版印刷から活版印刷への移り変わりに注目して」樋口摩彌
2.「書籍の看板と板株――享保以前」金子貴昭
3.「巻末書籍広告の板木――芸艸堂所蔵『尾陽東壁堂製本畧目録』板木二種」松田泰代
4.「地域史誌の作られ方――自治体史と字誌(区史)を素材にして」高田知和
5.「デジタル・テキストが深める研究者の「読み」――Digital Humanitiesプロジェクトの実践事例から」鈴木親彦
6.「電子書籍のアクセシビリティに関する実証的研究――音声読み上げ機能評価のための分類」植村八潮
〈特別講演〉
「大阪で出版業を営むということ――創元社の120年」矢部敬一(創元社)
7.『出版研究』編集委員会
『出版研究』編集委員会は,随時会合を開いて,学会誌『出版研究』の企画・編集にあたり,2013年3月20日に第43号(A5判,246頁,700部,定価本体2,600円+税を発行し,あわせて第44号の編集をおこなった。
8.広報委員会
広報委員会は,学会活動に関する対外的広報活動を随時おこなうとともに,学会案内の作成,および『日本出版学会会報』の企画・編集に当たり,次の各号を発行した。
第135号=56頁,2013年8月25日 (700部)
第136号=40頁,2014年1月25日 (700部)
また,当学会の公式ウェブサイトで情報発信をおこなった。
9.関西委員会
関西委員会は,調査研究委員会と協力して,学会の秋季研究発表会の運営にあたった。
10.国際交流委員会
国際交流委員会は,第16回国際出版研究フォーラムの発表者,参加者の募集および主催者側である韓国出版学会との連絡・調整にあたった。
11.出版企画委員会
今後の企画について検討をおこなった。
12.日本出版学会賞審査委員会
日本出版学会賞審査委員会は,第35回日本出版学会賞の審査にあたり,検討をおこなった。
13.役員(2014年度総会まで)
会長=川井良介
副会長=植村八潮 諸橋泰樹
理事=浅岡邦雄 茨木正治 大和博幸 掛野剛史 菊池明郎 木下修 清田義昭 古山悟由 佐竹久仁子 柴野京子 志村耕一 田中公子 蔡星慧 塚本晴二朗 中西秀彦 中町英樹 中村幹 中村健 橋元博樹 長谷川一 樋口清一 星野渉(事務局長) 村木美紀 山田健太 湯浅俊彦 吉田則昭
監事=竹内和芳 八木壮一
14.常設委員会
(◎=委員長・部会長,○=副部会長)
(1)総務委員会=◎植村八潮 川井良介 中村幹 星野渉 諸橋泰樹
(2)調査研究委員会=◎植村八潮 川井良介 星野渉 諸橋泰樹
学術出版研究部会=◎橋元博樹 ○柴野京子
雑誌研究部会=◎吉田則昭 ○大澤聡 ○橋本嘉代
出版技術・デジタル研究部会=◎中村幹 ○梶原治樹 ○田中公子
出版教育研究部会=◎蔡星慧 ○清水一彦
出版経営研究部会=◎木下修 ○永井祥一 ○中町英樹 星野渉
出版編集研究部会=◎植田康夫 ○蔡星慧 飛鳥勝幸
出版法制研究部会=◎塚本晴二朗 ○樋口清一
出版流通研究部会=◎清田義昭
出版史研究部会=◎柴野京子 ○浅岡邦雄 ○田中公子
関西部会=◎湯浅俊彦 佐竹久仁子 中西秀彦 中村健 村木美紀
(3)『出版研究』編集委員会=◎諸橋泰樹 ○茨木正治 石沢岳彦 稲田隆 上田宙 掛野剛史 末包愛 玉川博章 長谷川一 山崎隆広 吉田則昭
(4)広報委員会=◎志村耕一 石沢岳彦 稲田隆 古山悟由 下村昭夫 田中公子 橋元博樹
(5)関西委員会=◎中西秀彦 佐竹久仁子 中村健 村木美紀 湯浅俊彦
(6)国際交流委員会=◎山田健太 竹内和芳 蔡星慧 塚本晴二朗 樋口清一 文ヨン珠 王萍
(7)日本出版学会賞審査委員会= ◎川井良介 浅岡邦雄 柴野京子 玉川博章 塚本晴二朗 橋元博樹 樋口清一
(8)出版企画委員会=◎木下修 星野渉