2011 韓・日出版学術会議報告
星野 渉
日本出版学会は今年6月15日,韓国出版学会の招きで,ソウル国際図書展の会場であったソウル市江南区のCOXで,「2011韓・日出版学術会議」に参加した。学術会議では,日本と韓国の発表者が,両国間での版権取引の現状や課題などについて報告とシンポジウムを行った。
この会は,今年2月に韓国出版学会会長に就任した金浦大学・南爽純教授が,日本側に呼びかけて実現。「韓・日出版著作権の現状と発展方策」をテーマに,両国から8人が発表。日本からは日本書籍出版協会・樋口清一事務局長,平凡社・関正則東洋文庫編集長,翻訳家・舘野氏,東京電機大学・矢口博之教授,文化通信社・星野渉編集長の5人が参加した。
著作権交流の現状を報告した世明大学・金基泰教授によると,韓国で2010年に国立図書館に納本された新刊4万291点のうち,翻訳書が1万771点と26.7%に達し,このうち40%にあたる4282点が日本の出版物だという。
一方,発表者の1人で韓国文学の翻訳家である舘野氏によると,“韓流”によって映像,音楽は増加しているのに対して,日本における韓国出版物は2000年から10年間の累計でも226点に過ぎないという。
この不均衡について,平凡社で韓国語からの翻訳を多く手がける関正則東洋文庫編集長は,韓国文学界に,日本の大江健三郎や村上春樹のような,日本で知名度のある作家が不在であることを挙げ,そうした新しい才能を日本に紹介する必要性を指摘。舘野氏は・両国での翻訳推薦図書の選定・出版支援(翻訳支援)についての共同パンフレットの作成・詳細にジャンル分けした韓国図書目録の作成・日本で韓国図書を常備する場を作る・韓国図書を宣伝する場を作るを挙げた。
最後に南会長はこの会議を韓日交互に開催していくことを提案。会場を移しての懇親会では,韓国の出版社や書店の関係者も招いて,日本からの参加者と意見交換を行った。