秋季研究発表会をめぐって  芝田正夫 (会報117号 2005年12月)

■ 秋季研究発表会をめぐって (会報117号 2005年12月)

  芝田正夫

 2005年度秋季研究発表会が,2005年11月26日,岡山駅前の岡山国際交流センターで開催された。秋季研究発表会はこれまで関西地区で開かれてきたが,今回はじめて関西の地を離れての開催となった。関西で企画する場合,どうしても関西在住の理事所属の大学が会場となり,最近では数年に一度は同じ大学が会場校にならざるを得なかった。
 そこで,関西以外の西日本で開く可能性はないものかと関西委員会のメンバーで思案していたところ,江代修会員(岡山大学)に岡山での開催をお引き受けいただくことができた。準備作業は江代会員と木村邦彦会員(岡山理科大)の現地事務局と,企画を担当する関西委員会,それに学会理事会と事務局という3者に分かれ,企画段階では連絡がうまくいかない場面もあったが,同報メールを活用し,結局は一度も全体の会合は持たずに,なんとか当日を迎えることができた。発表会には29名の参加があり,はじめての関西地区以外での開催としては成功裏に終わることができた。
 これまで関西での開催にあたっては関西でしか聞けない講演を,と考えて企画してきた。今回は関西委員会の湯浅俊彦会員(大阪市立大学大学院)の発案で,岡山の吉備人出版の山川隆之さんをお招きし,「デジタル時代の地方出版」というテーマで興味深いお話をうかがうことができた。岡山という地域に根ざした歴史や民俗分野の著作の刊行,市民グループや団体との共同出版などに特色を出され,また新しい書き手の発掘にも努力されていることなど,地域出版の姿について話されるとともに,デジタルコンテンツの作成にも力を注いでおられる現状にも触れられ,最後に地域出版の課題についてまとめられた。
 講演のほか,4名の個人発表もあり,充実した研究発表会となった。ただ,首都圏と関西圏以外の開催なので,近隣の地域からの参加も期待したが,関東と関西からの参加が大半となった。地元で学会のPRを行い,会員の拡大につなげる方策をも考えるべきだったかもしれない。
 今回は,研究発表会の翌日に研修ツアーを実施した。13名の参加で,閑谷学校(岡山藩が設立した郷学校),備前焼窯元,竹久夢二生家を訪れた。紅葉豊かな時期に備前路を満喫するツアーとなった。研修という名称を冠して,出版文化とすこしは関連のある名所を選んだ。
 2006年度は,秋に第12回国際出版研究フォーラムが東京で開催されるため,秋季研究発表会は開かれない予定であるが,2007年度からも関西以外での開催が検討され,2005年度の学会事業計画に謳われているように,「次第にその範囲を拡大することによって,全国規模で研究者を糾合したいと考えている」とする方針が一歩でも進むことを願っている。

[ このページの先頭へ ]