日本出版学会創立35周年に寄せて   遠藤千舟 (会報114・115合併号 2005年2月)

■ 日本出版学会創立35周年に寄せて(会報114・115合併号 2005年2月)

遠藤千舟

 日本出版学会設立にかかわる最初の会合は,1968年3月13日,布川角左衛門氏以下6名の出席で開催され,4月18日には,後に初代会長に就任する野間省一氏(講談社社長=当時)が加わり,5月16日には有志7名による会合が召集された.この会合の確認に基づいて作成された設立趣意書が6月30日に発送され,やがて17名となった設立委員会の努力によって,1968年12月12日,設立発起人会を開催,そして遂に1969年3月14日,日本出版クラブにおいて学会設立総会が開催されたのである.まさにそれは日本出版学会の誕生であった.
 有志7名のひとりであった清水英夫氏は,学会設立に先立つ1967年の夏,「出版学の可能性と必要性」を発表している.「出版学」という新しい概念と学術研究分野を世界に先駆けて提示したのであった.
 出版に関する学術的な研究は,過去35年の間に世界中に広まり,多数の研究組織が設立され,無数の研究が発表され,中等後教育においては出版学の講座さえ開設され,大学院においては出版学専攻の学位さえ授与されることとなった.最初の有志7人のうち,野間省一,布川角左衛門,美作太郎の3氏はすでに鬼籍に入られているが,もし叶うならば,このような状況をお知らせしたいとさえ筆者は考えている.例えば,2002年に開催された国際図書史学会のロンドン大会,2003年のクレアモント大会には,日本出版学会の会員,しかも女性会員が研究発表に遠征している.また,筆者は,韓国・清州や香港で開催された国際会議で,ヨーロッパ諸国の研究者や米国の実務家たちと,新しい時代の出版のあり方について議論をおこなう機会があった.
 さらに,1984年10月13日,韓国・ソウルで開催された第1回国際出版研究フォーラムは,以来今日まで20年に渡って継続され,通算11回のフォーラムが開催された.
 我々は,学会創立35周年を迎えた2004年を新たな出発の年と位置づけ,2004年5月に開催された総会で,創立35周年記念事業を決定,秋には記念事業委員会が組織され,12月にはその事業の一環である募金活動が開始され,早々に多くの方々から寄付金が寄せられている.
 記念事業の一環である第12回国際出版研究フォーラムの2006年における日本開催は,中国,韓国の人々に歓迎をもって受け入れられ,2005年1月末には,国際フォーラム実行委員会が組織された.また,学会の活動とこれまでの研究成果の記録のためには,日本出版学会35年史編集委員会が組織され,作業が開始されている.
 我々は,新しい学問分野を開拓した先達の働きを誇りと感謝をもって振り返りながらも,単にこれを回顧の機会とするのではなく,新たな人類の歴史を開く出発の機会としたいと考えている.
(副会長)

[ このページの先頭へ ]