「取次の再編か=これからの出版流通はどうなる」星野 渉(2015年11月12日)

出版経営研究部会・出版流通研究部会(2015年11月12日)

「取次の再編かーこれからの出版流通はどうなる」

星野 渉(文化通信社)

星野会員の報告は、「出版産業全体」を分析しており、その全体像は、

「出版経営研究部会」のコーナーをご参照いただければ幸いです。。

1. 出版物流の崩壊の危機

  2016年の出版界の現状と展望を、主として流通の側面から分析しますと、 日本の出版物流を支えてきた取次システムが崩壊したと言えます。
 取次システムは、書籍と雑誌の両方を流通させることによる内部補助によって、極めて効率の良い流通を実現し、「委託配本」によって出版社の営業・物流コスト、そして書店の仕入れコストを最小化してきました。そのことにより、他国に例をみない低コストの出版流通を実現し、戦後出版産業の隆盛を支えてきました。
 ところが1990年代の後半から、インターネットメディアの普及によって、特に雑誌の部数落ち込みが激しく、雑誌の収益性に依存してきた取次の経営に急激な業態悪化を招き、業界3番手、4番手の取次が経営破綻をきたすなど「出版物流システムが崩壊した」と言っても過言でない状況がうまれてきています。
 強力な取次システムに支えられてきた日本の出版業界だっただけに、その崩壊はかつてない衝撃となって、出版産業に転換を迫っています。
 そんな取次システムに依存してきた書店は、法人数の減少と大書店への集中化が急ピッチで進んでいます。
 そうしたことから、出版業界はまさに今、浮沈の時を迎えています。

2. 書店は何をすべきか
 

厳しい現実への対応策とし、書店は、一方では大型店と他方では地域的・個性的な店に二極化し、その形態は多彩になって来ていると言えます。
 「代官山蔦谷書店」は、シニア世代を顧客に取り込むというコンセプトで、高級感が売り物。書籍や雑誌に加えてジャズ、クラッシックなどのCDをそろえた音楽フロア、DVDの映像フロアなどを構え、ゆったりとした空間で、蔦谷のビジネスモデルのひとつとしてPRに役立っていると言えます。
 神田神保町に本店を構える「東京堂書店」は、2012年から東中野など既存店をリニューアルしカフェを併設するなど、この数年複合化を加速させています。
 東京・下北沢のある「本屋B&B」は、ブックコーディネーターの内沼信太郎さんと本屋大賞の仕掛け人でもある博報堂ケトルの嶋浩一郎さんが経営するユニークな書店です。書籍を陳列するための家具さえも売っています。
 いずれも「魅力的な空間としての書店」を目指していると言えます。

*     *     *

 星野会員の報告は、多面的で、とりわけ「ドイツに学ぶ トリノアライアンス」の実情報告など貴重なものが多かった。
 参加者;29名(会員20名、一般9名、会場:日本大学法学部
(文責:出版流通研究部会)