「ジャーナリズムを立法・司法・行政に並ぶものと位置づける考え方について」塚本晴二朗(2024年7月27日開催)

■ 日本出版学会 出版法制研究部会 開催報告
 (2024年7月27日開催)

「ジャーナリズムを立法・司法・行政に並ぶものと位置づける考え方について」
 報告者:塚本晴二朗(日本大学法学部教授)

 
 2024年7月27日(土)、日本大学法学部教授の塚本晴二朗氏を報告者に迎え、出版法制研究部会をオンライン(Zoom)にて開催した。塚本氏は、これまでに『ジャーナリズムの規範理論』(日本評論社、2021年)を上梓するなど、ジャーナリズム論やジャーナリズム倫理に関する研究成果を多数発表されている。
 本報告では、「デジタル化して誰もがジャーナリズム的行為を行えるようになった。自身がニュースと認識する出来事や、自らの主張を発信することに誰の許可も必要ない。法律以外に守らなければならないルールもない。まして、ジャーナリズム教育など受ける必要もない。それなのに、なぜジャーナリズムは、その倫理学に則った行為でなければならないのだろうか」といった、根本的な問いに真摯に向き合うための議論が展開された。
 具体的には、ジャーナリズムが歴史的に「個人的活動」から「社会的活動」へ、そして「制度的実践」へと展開してきたことが再検討され、ジャーナリズムを「第4階級(Fourth Estate)」という制度的実践として位置づける考え方について、Stephen J. A. WardやClifford G. Christiansらの議論を踏まえた考察が示された。また、ジャーナリズムが「制度的実践」として認識されていく過程は、ジャーナリズムの「社会的責任論」が規範理論として確立していった過程と軌を一にしていることが明らかにされた。
 報告後の質疑応答では、「制度的実践」をめぐる定義からデジタル時代におけるその今日的意義に関する議論まで、闊達な意見交換が行われた。
 なお、今回の塚本氏による報告は、放送文化基金の助成による研究課題「『公共圏の汚染』に対する放送メディアの制度的実践:デジタル時代におけるメディア倫理学の再構築」(研究代表:笹田佳宏氏)の研究成果の一部を発表したものである。
 
日 時:2024年7月27日(土) 19:00~20:30
場 所:オンライン(zoom使用)
参加者:15名
(文責:田上雄大)