出版界のこの1年を振り返る
――日本雑誌協会の倫理法制に関わる活動を中心として
渡辺桂志
(日本雑誌協会 専務理事補佐)
大きく分けて三つの点についてお話しを頂いた。
1.出版界の自主規制
出版界の自主規制としては,日本雑誌協会・日本書籍出版協会・日本出版取次協会・日本書店商業組合連合会の4団体からなる,出版倫理協議会の帯紙措置が代表的な初期の自主規制であった。その後2001(平成13)年に出版ゾーニング委員会が設置される。この委員会は,学識経験者3名,出版倫理協議会議長,出版倫理協議会構成4団体代表各1名,出版倫理懇話会代表1名の合計9名で構成される。この委員会は,著しく性的,暴力的ないし残虐な表現があり,青少年に不適当であるとされ,且つ爾後も同様の内容が続くと判断される雑誌類に対して,「出版ゾーニングマーク」を表示することを要請する。
また,日本雑誌協会でも,編集倫理委員会の中に倫理専門委員会が設けられている。ここでは,毎月2回,協会加盟誌の通覧作業が行われている。過激な性表現,暴力,残虐性,性の広告表現等に関して,青少年に好ましいかどうか専門委員の意見を聞き,不適切とされたものには,改善を求めている。
2.苦情処理機関
2002(平成14)年に,日本雑誌協会は,加盟社発行の雑誌記事における人権上の問題に関わることで,異議,苦情の申し立てを,受け付ける窓口として,雑誌人権ボックス(MRB)を開設した。編集権に介入することはできないため,限界はあるものの,大分周知されてきているようである。
3.法案等への対処
今年度は,児童ポルノ禁止法の改正法案に対する,反対声明と,特定秘密保護法案に対する反対声明が,主な法案等に対する活動であった。児童ポルノ禁止法の改正法案に関しては,単純所持が含まれ可決される可能性が高く,出版業界に止まらず,危機感を持たねばならない状況である。特定秘密保護法案に関しては,既に可決してしまったが,反対のキャンペーンを行うような雑誌はなかった。「そういう記事は売れないか」というのが主な理由のようで,そうした点にも危機感を持たねばならない状況である。
他にも日本雑誌協会は,編集倫理委員会の中に人権小委員会を設置し,人権問題に関する研究会的なものを,年に3回ほど行っている。
自主規制についていえば,かなり丁寧に行っており,その他の活動もかなり多岐にわたって,積極的に行われている。しかし,それにもかかわらず,雑誌に対する倫理的な問題での風当たりは強い。日本雑誌協会の諸活動があまり知られていない,という面は否定できない。
(文責:塚本晴二朗)