青少年条例をめぐる東京都の現状と課題  山崎勉 (2005年2月14日)

出版法制研究部会   発表要旨 (2005年2月14日)

青少年条例をめぐる東京都の現状と課題

 前回に引き続き,東京都青少年条例改定に伴う,いわゆる「有害」図書の販売方法の変更とその影響をテーマに,今回は規制当局である東京都生活文化局から山崎勉氏を招き,条例改定の経緯と今後の課題について話を伺った。
 山崎氏はまず,条例制定の経緯と現状について説明した。そして,条例改正に伴い,出版業界が採った小口シール留め措置に対しては,定められた包装方法であるビニール包装やひも掛けに準ずるとは言えない不十分な措置との認識を示しつつも,自主規制の動きとして一定の評価はしており,現在のところ当該図書の購入は続けているものの内容の状況を見守っているとした。こうしたシール留め図書類を有害図書に指定しない一方,現在のところややマニア向けとも言える図書類についての指定に重点を置いており,最近の傾向としてそうした図書にも自主規制マークの表示が行われるようになったと言う。ただし,シール留め図書類についてもあまりに内容が露骨で,過激な場合は,今後指定せざるを得ない旨を,直接,当該出版社に伝え,改善を要請しているとのことだった。
 書店での区分陳列は,大手コンビニエンスストアではおおむね仕切り板による仕切りが行われているか,初めから成年向け図書類が置かれていないなど,完全実施されていると言っていい状況だ。大型書店においても,陳列自体に区分がなくても,自主的にビニール包装かひも掛けが行われている。一方,街の小規模書店においては,近年の傾向として成年向け図書類の扱いが増えており,平積みや一般図書との混売が見受けられているという。都は,書店に立ち入り成年向け書籍を購入する際に,混売を避けゾーニングを行うよう指導している。
 出版物自体の変化として,月刊誌だったものがムックとなり,販売期間が伸びる傾向が見られる。そのため,書店へ立ち入り検査を行うと,指定した図書類が包装されていない状況が見られる。また,表示図書の包装が努力義務として課せられているが,あまり守られていないのが現状だ。表示がある結果として,かえって誰でも読めるようになってしまっているので,今後出版界に改善をお願いしたいと考えているという。
 以上の報告の後,質疑を行った。質疑では,青少年条例のそもそもの目的が,いわゆる有害図書の青少年からの隔離だったはずが,小口シール留めを行っている図書についても内容自体に踏み込み審査するのは,憲法が禁止している検閲に近づいているのではないかという点に議論が集中した。都としては,既に述べた通り小口シール留めは,定められた包装方法とは認め難いとの認識で,あくまで出版界の自主規制として尊重しているのであり,内容があまりに行き過ぎている場合は,通常の図書類と同様に指定もあり得るとの考えが示された。それに対し,シール留めによって,ひも掛けに近い中味が店頭で見づらいよう措置されているのであり,それ以上内容に踏み込むことは疑問だという意見や,「社会として,わいせつなどの図書をどのようにコントロールするのか,全体像が見えてこない」などの意見が出され,規制の在り方をめぐり活発に議論が交わされた。