本の索引はコンピュータで作れるのか?――著者・編集者・読者の視点で考える 藤田節子 (2021年6月22日開催)

■ 日本出版学会 出版編集研究部会 開催要旨(2021年6月22日開催)

本の索引はコンピュータで作れるのか?
――著者・編集者・読者の視点で考える
藤田節子
(フリーランス・ライブラリアン、元川村学園女子大学教授)

『本の索引の作り方』(藤田節子著 2019 地人書館)を手にしたとき、まず巻末の索引頁を開き全体構造を確認し、索引凡例も確認した編集者は少なからずいるだろう。「『本の索引の作り方』という本の“索引”」は冒険的・挑戦的でもあり、著者の気概が感じられる。

今回の発表では著書刊行の経緯ばかりでなく、編集者・著者へのアンケートとインタビューの調査結果をまとめた報告書「図書の索引作成の現状」(2018)から見えてきた様相、問題点を提示された。(1)索引に対する意識、(2)索引作成の主体、(3)索引作成のプロセス、(4)見出し語の選択、そして(5)索引作成の教育・訓練にまとめ、全体を自然科学・社会科学・人文科学に分け、編集者・著者の側面からも分析する。索引作成を決めるのは自然科学の編集者の比率が、見出し語の選択は社会科学の著者の比率が高く、注から見出し語を選択するのは人文科学の比率が高いなど興味深い結果を見る。

何よりも具体的だったのは、実例による索引の機能に触れた箇所である。「香菜(こうさい)・パクチー」、「扇風機・火災検知システム・火災発生原因」、「頭痛」など、様々な実例をもとに複数の索引表示パターンを提示された。「を見よ参照」「ダブルポスティング」「補足説明」「同義語」「副見出し語」などの表示や用語追加の仕方、また「語の統一」「本文の変更案」の観点も見ることができた。人間の表現する文章はたいへん複雑であり、コンピュータに文章の意味する内容を理解・分析させることはまだ難しいこと、そして読者の利便性についても改めて考えさせられた。

より良い索引を作成するために、「著者」は索引を意識して原稿を書き用語の統一と全体構成を行い、段落の内容と段落の中の文章の内容との相互関係を明確にする、「編集者」は編集工程にあらかじめ索引作成を含め凡例を作る、「読者」は索引を使って情報収集し情報の創造や発信する情報リテラシーの訓練が重要であると結ぶ。様々な要因があり、現実的には困難なケースも多いが、傾聴すべき提案であった。

参加者からは、学習できる機関や学術的なルール、見出し語の分類の仕方、翻訳における原著の示し方、索引の定式化の困難さ、索引作成者の著作権、共同執筆本での索引作成の問題点、グロッサリー(用語集)の作成についてなど、多くの質問を得た。本日の研究会をきっかけに、執筆者・編集者・読者がそれぞれ、今一度、索引を考える契機となったことを報告する。

日 時: 2021年6月22日(火) 午後6時00分~8時00分
会 場:オンライン開催(Zoom)
参加者:参加登録98名、当日参加者57名(内会員14名)
(文責:飛鳥勝幸)