「出版産業の30年・100年を振り返る~『平成の出版が歩んだ道』」能勢仁・河野高孝・八木壮一(2022年1月13日開催)

■ 日本出版学会 出版産業研究部会 開催報告

「出版産業の30年・100年を振り返る~『平成の出版が歩んだ道』」

報告:能勢仁(ノセ事務所)
   河野高孝(河野書店)
   八木壮一(八木書店)

 
1.平成の出版産業の状況と新しい兆し(能勢仁)
 能勢氏からは、『平成の出版が歩んだ道―激変する「出版業界の夢と冒険」30年史』(メディアパル、2020年)の内容を下敷きとしながら、昭和末から最近までの出版産業全体の動きを振り返る講演が行われた。平成前期には好調だった出版産業が、専門取次の危機時代である中期を経て、後期に至る中で従来の方式が行き詰まり変革の必要に迫られていることが示された。次代に向けての新たな動きについては、書店・取次・出版社・図書館という四つの切り口から整理された。
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2.東京古書組合の百年(河野高孝)
 河野氏からは、自身が中心となってまとめられた『東京古書組合百年史』(東京都古書籍商業協同組合、2021年)の内容を基礎として、特に平成以降の時代を中心に講演が行われた。本が「足りないもの」から、「余るもの」に変わってきた平成初期を皮切りに、ブックオフの登場や古書組合・古書市場の変化などを経て、古書店のIT化・インターネットの導入に至るまでの変化が語られた。結びとして古書店の今後のためには、「平等性」と「多様性」、そして「柔軟性」こそ重要であるというキーワードが示された。
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3.明治からの150年 古本と古書 神保町(八木壮一)
 八木氏からは、河野氏の講演を受けるかたちで、特に神保町古書店街についての講演が行われた。江戸から明治への移行を皮切りに、各時代の神保町を記録した貴重な写真を示しながら、神保町古書店街の変化を追っていく内容であった。また最後には、古書販売を生業とする意義も述べられた。

 すでに令和に入って久しいが、平成は新刊市場が大量販売による成長を終え、根本的な構造の変革を求められるに至った30年間であったといえる。この変化は、新刊販売と表裏の関係にある古書業界にも様々な形で影響したといえる。双方の視点から平静を振り返るとともに、将来に対しての展望を示す意味で、出版産業全体を俯瞰することにつながる研究会であった。

日 時: 2022年1月13日(木) 15:00~17:00
開催方法:オンライン開催(Zoom)
参加者: 46名(会員:26名、非会員:15名、登壇者:3名、部会担当:2名)

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(一部音声が聞き取りにくい部分があります。ご了承ください。)