鈴木親彦
2018年、出版流通研究部会と出版経営研究部会が再編成され、出版産業研究部会として新たなスタートを切ることとなった。初代部会長として、新部会の設立にあたり、これまでの流れとこれからの展望を簡単に述べておきたい。
出版流通研究部会は1992年に設立した「現状・政策部会」をルーツとし、1996年から活動を行ってきた。「流通」を軸においてはいるが、制度的な問題や現実的な個別の課題、出版コンテンツの移り変わりなど、産業全般を考える研究会を開催してきた。一方の出版経営研究部会は、2004年に経営課題、経営資源問題、狭義の経営戦略、経営分析についてはもとより、産業構造、流通、サービス、マーケティング、イノベーション、その他さまざまな問題を横断的に取上げて研究することを目的に設立され、活動を続けてきた。
二つの部会は「流通」と「経営」を看板に置きながらも、実際には日本の出版産業を巡る問題を横断的に取り上げてきたと言える。「流通」「経営」を巡る二つの部会が「産業」という新たな枠組みで再編されることで、日本出版学会に広く出版産業全体を問題として取り上げることができる部会が誕生したのである。
奇しくも出版流通研究部会最後の研究会となった「『出版流通研究』の過去・現在・未来」において、長年出版流通研究部会をリードしてきた清田義昭会員(出版ニュース社)が「良い解決方法は本気の議論無くしては生まれない。ぜひ積極的に、議論ができる場を作っていってほしい。」とまとめを述べている。新たにスタートする出版産業研究部会は、まさに出版産業を巡る「議論の場」としての役割を果たしていきたいと考えている。