■日本出版学会 雑誌研究部会 開催報告
(2024年3月26日開催)
「ビデオゲーム関連雑誌とその研究可能性」
毛利仁美(立命館大学ゲーム研究センター客員協力研究員)
2024年3月26日(火)、立命館大学ゲーム研究センター客員協力研究員の毛利仁美氏を報告者に迎え、雑誌研究部会をオンライン(Zoom)にて開催した。毛利氏は、2022年度に博士論文「ビデオゲーム関連資料としての「学年誌」の考察―子どもの遊びのアーカイブの観点から―」を立命館大学に提出しており、本報告では同論文における研究成果も交えつつ、「①ビデオゲーム研究資料としての雑誌」、「②雑誌を対象としたビデオゲーム研究の事例」、「③今後の展望」の3点を中心に、ビデオゲーム関連雑誌の研究をめぐる貴重な知見が示された。
まず「①ビデオゲーム研究資料としての雑誌」では、アーケードゲーム、パソコンゲーム、家庭用ゲームといったビデオゲームの種類を確認した上で、アーカイブや先行研究の現状とその課題が紹介された。また、任天堂のファミリーコンピュータ(略称:ファミコン)の発売によるブーム到来を契機に、1980年代にはファミコン雑誌をはじめとする専門雑誌が相次いで創刊された状況が解説されるとともに、図書館などにおける当該資料の保存・所蔵の状況により、アクセス困難な雑誌がすでに複数存在していることが指摘された。
続く「②雑誌を対象としたビデオゲーム研究の事例」では、ビデオゲーム専門雑誌を分析対象とした先行研究を整理しつつ、雑誌記事そのものを対象に、記事内容にまで踏み込んだ分析が進んでいない現状が明らかにされた。こうしたなか毛利氏は、プレファミコン時代に登場した雑誌のなかでも、小学館の学年別学習雑誌(学年誌)に見られるゲーム記事に着目した経緯を述べつつ、それらの記事内容を分析した手法や成果を報告している。具体的には、学年誌における多量のゲーム記事、パソコンやテレビゲームの教育的内容、ビデオゲームを遊ぶ様子の記事などの分析・考察を踏まえて、記事内容の特徴と傾向、その変遷の様相が明らかにされた。また学年誌の分析によって、電子ゲームの普及、教育ツールとしてのゲーム、ファミコン登場直後のファミコン認識、女児とビデオゲームといった、ゲーム文化史の重要な視点が見出されることも指摘された。
最後に「③今後の展望」では、アーカイブの観点から見たビデオゲーム関連雑誌をめぐる研究の課題として、ゲーム雑誌の所蔵館調査、ゲーム雑誌の分類作成の必要性が述べられた。また、学年誌以外の子ども向け雑誌との記事比較や、産業史に偏らない歴史研究の模索など、今後のゲーム研究の展望と可能性もあわせて提示された。
そして、以上の報告後に実施された質疑応答では、学年誌に見られたゲーム広告の様相、記事内容の分析に用いた手法等の詳細、ゲームハードの違いによる記事内容の傾向の有無、ホビーを扱った記事との比較などに関する質問が挙がり、本報告の内容理解や今後の研究に関して示唆に富む議論が展開された。
日 時:2024年3月26日(火)19時00分~20時30分
場 所:オンライン開催(Zoom)
参加者:26名
(文責:山中智省)