小中高校でのMIE実践に応用できる、大学での雑誌作り教育の実例報告
清水一彦 (江戸川大学)
富川淳子 (跡見学園女子大学)
雑誌作りをMIE(マガジン・イン・エデュケーション)の一環として小中高校の授業に取り入れることは、アクティブラーニング、つまり「主体的・対話的で深い学び」に役立つことが期待できる。しかし、まだその指導方法が確立されているとは言い難く、導入しはじめた学校でも試行段階である。一方、出版教育の一環として雑誌作りの経験を重ね指導方法も確立し、アクティブ・ラーニングとしての教育効果を上げている大学の例はいくつかある。今回は、以下の2例の報告となった。
清水一彦会員からは、大学の出版教育の一環としての雑誌制作について、江戸川大学での例を報告した。当初、出版業界に就職を希望する学生のニーズに対する回答として組み立てたシラバスが、この8年間で一定の成果をあげ結果的にはアクティブ・ラーニングとなっていて、さらにこのプログラムを小中高校向けに応用すれば、MIEの実践となる可能性があることをのべた。
富川淳子会員は中高の雑誌作りの指導法の一例として、自身が年1回行っている私立中学のキャリア教育授業の内容を紹介した。1コマ45分×2コマの授業の前半は出版界や雑誌編集部の仕組み、そして雑誌作りのプロセスを明示しながら、それぞれのプロセスで行う作業と、そこでどんなことを考えなければいけないかを自身の大学で制作している小冊子を例にあげて説明する。後半の2コマ目はターゲットとコンセプトに合わせて各自が企画を立て、2ページのラフレイアウトをそれぞれが作る体験授業としている。大学の授業でも最も力を入れて指導する、自分の企画に合わせたラフレイアウト作成は雑誌編集の楽しさや難しさが凝縮しているプロセスである。従ってこのプロセスだけでもMIEならではのアクティブラーニングの効果は十分に期待できると説いた。
会場からは、小中高校の指導要領との整合させることによって、また、美術・図画・工作といった授業と関連させることによってMIEの発展可能性があるのではないかとの指摘があった。また、学校図書館だけではなく、現在実行されている公共図書館での雑誌作りプログラムも若年層に向けて発信することが可能なのではないかという意見もあった。さらに、大学および小中高校の授業で雑誌作りを有効化させるための教員向け指導法の確立を目指す必要も確認された。
参加者: 32名 (会員20名、一般8名、学生4名)
会 場: 日本大学法学部 神田三崎町キャンパス(水道橋)10号館7階 1072教室
(文責:清水一彦)