紙書籍、電子書籍に対する消費者の意識・行動の変化と電子図書館の今後 渡部和雄・梅原英一 (2019年10月4日開催)

■ 出版デジタル研究部会 開催要旨 (2019年10月4日開催)

紙書籍、電子書籍に対する消費者の意識・行動の変化と電子図書館の今後

渡部和雄氏 (東京都市大学知識工学部)
梅原英一氏 (東京都市大学メディア情報学部)

 電子書籍の普及はコミックを中心にここ数年着実に増えつつある。しかしながら紙の出版物の市場規模は減少を続けており、電子書籍市場の成長は、紙の出版物の減少を補う迄には至っていない。このような状況において、報告者の渡部和雄氏らは2013年以来ほぼ毎年、紙書籍と電子書籍に対する意識・行動を分析し、紙出版物、電子出版物の利用を促進する方策を検討する目的で消費者調査を行ってきた。

 2018年9月に実施した調査では、関東地方1都6県を対象として、ネット調査会社の100万人のパネルに対し、ランダムにメールを送り回答を依頼した。その結果、有効回答数711件のサンプルを得た。質問項目としては、性別、年齢、居住地域、職業、紙出版物の利用目的、利用理由、紙出版物のジャンル別関心の高さ、ジャンル別利用頻度、電子出版物の利用意向、利用頻度、紙出版物や電子出版物に対する意識・行動、利用場面(目的)により紙出版物と電子出版物を使い分けるか、などである。

 講演では、紙出版物を利用する人、紙出版物と電子出版物を併用する人に着目し、それぞれ出版物の利用目的、出版ジャンルごとの利用頻度を比較・分析した。さらに併用者については、紙出版物と電子出版物の使い分けについて分析した結果が報告され、今後の紙書籍・電子書籍の向かうところについて議論が行われた。

 また、梅原英一氏からは、東京都市大学の事例を中心に図書館のデジタライゼーションに関するビジネスモデルの観点からの分析の紹介があった。実際に東京都市大学の図書館における電子書籍の運用状況、電子書籍を取り扱うために必要とされる図書館員のスキル内容と求められるスキルレベル、ならびにそれら電子書籍関連スキルを習得するために必要な方法とそれが容易でないことなどについて報告された。報告を受け、図書館のデジタライゼーションに関する議論が活発に行われた。

日 時: 2019年10月4日(金) 午後6時~7時30分
会 場: デジタルハリウッド大学
参加者: 26名 (会員15名、一般10名、学生1名)

(文責:矢口博之)