金井剛志
本年度第1回のデジタル出版研究部会は,2009年5月12日に東京電機大学(神田キャンパス)を会場に,「IDPF/ePubフォーマットと欧米の電子書籍リーダー」と題して開催した。講演者はJEITA(電子情報技術産業協会)のE-Book標準化G委員であり,電子書籍リーダーのファイルフォーマットに詳しい金井剛志氏で,IDPF/ePubフォーマットの生い立ちから現状,実例を紹介いただいた。
金井氏はソニーの電子ブック「データディスクマン」時代から電子書籍端末の開発に携わっている。リブリエにおけるファイルフォーマットを開発,現在では米国でソニーリーダーの開発に携わっている。ソニーリーダーも採用しているIDPF/ePubフォーマットについては,開発者だけが知る情報提供もあり,日本では情報が少ないなかで貴重な機会となった。PDFや国際標準のIEC62448(Generic format) などと比較しながら電子書籍フォーマットについて討議した。
Kindle DXの公表された内容では,9.7型ディスプレイ搭載でPDFをサポートしている。図版などの多い教科書をPDFで利用できることから,米国教科書出版社が提供を発表した。ソニーリーダーはPDFに加え,IDPF/ePubフォーマットもサポートして,Kindleに先行して英仏独で販売している。電子書籍リーダーのファイルフォーマットは,オープンな標準であるとともに,読者による文字の拡大縮小可能にするXML系か,レイアウトを保持したPDF系か,目的に応じた多様な選択が求められている。
一方で,ePubや米国eブックの質は,高いとは言えない,という。米国はコスト優先の国で書籍の品質も高いとはいえない。コスト優先で品質が低い典型的な例が,Googleによるパブリックドメインのeブックで,OCRの精度がとても低い。
研究部会は,5月7日にKindle DXが発表された直後と言うこともあり,直前の案内にもかかわらず,会員23名を含む65名の参加者で熱心な質疑が交わされ盛会となった。
(植村八潮)