電子出版と電子図書館――最近の動向から
北 克一
(大阪市立大学大学院創造都市研究科兼学術情報総合センター教授)
2012年6月末以降,アマゾン社のキンドルの日本発売の動き,楽天のコボ端末,マイクロソフト社のSurface端末,グーグル社のNexus7端末などのニュースが流れた。電子書籍を取り巻く情報環境においても,第二幕が開ける。
ただし,本発表では個々の端末などの機能,価格比較の視点は取らない。基本とする視座は,「星間帝国」間の前面衝突の前夜と考えるからである。すなわち情報環境生態系のユーザー囲い込みの争いである。
また,コンテンツビジネスの生態系は,学術情報系を除いては,コンテンツ消費マーケットである。
本発表では,電子出版と電子図書館について,IDRF(International Digital Publishing Form)によるEPUB3やW3CによるHTML5/CSS3などの技術動向を取り上げると共に,グーグル帝国,アップル王国,アマゾン侯国の「星間帝国」の各戦略を概観する。なお,HTML5の技術的な特徴は,(1)ブラウザ上のJavascriptで本格的な情報処理を実現する機能の導入,(2)HTML文書の論理構造の明確化,(3)異なるブラウザ間の互換性の実現の向上,の3点である。
併せて,今後の方向性を,「Internet of Things」から「Web of Things」と位置づけ,アプリケーション,サードパーティから見た技術プラットホームの変更を垣間見る。これはネイティブ・アプリからウェブ・アプリへの地殻変動である。ちなみにネイティブ・アプリとは,自己のPCのOSのもとに,アプリ・ソフトをインストールする現在の一般的なソフトウェア使用方法である。一方,ウェブ・アプリとはクラウドのサーバー上のアプリ・ソフトを使用し,情報端末側はウェブブラウザと通信機能があればよい。
次に,電子書籍における価格モデルを総括し,さらにビジネスモデルの観点から,グーグル社,アップル社,アマゾン社を考察し,電子書籍の多軸からの考察に繋げる。検討の観点は,電子書籍のファイル区分,表示デバイス,DRM(Digital Rights Management),電子書籍の単位,電子書籍の利便と個人情報である。
最後に,図書館と電子書籍として,電子資料へのアクセス,短い歴史,電子書籍へのアクセス,公立図書館等での「電子書籍サービス」開始とその評価を扱う。取り上げる視点は,図書館と電子書籍の元に,電子資料へのアクセス,短い歴史,電子書籍へのアクセス,公立図書館等での「電子書籍サービス」開始とその評価などである。
(文責:北克一)