関西部会 発表要旨 (2009年3月25日)
ヤングアダルト系出版物の現在
村木美紀
ヤングアダルト系出版物と言われるマンガやライトノベル,ケータイ小説などは,図書館の蔵書にすることの是非を問われることがしばしばある。
ところが,メディアミックス化という戦略によって非紙媒体を好む消費者までをも取り込んでおり,マンガの商業的展開は日本に留まることを知らないし,ケータイ小説の紙媒体本の売上げも好調である。
発表ではこれらの出版物の歴史的経緯や今後の展望にも触れるとともに,現状を明らかにすることを目的とした。
まず最初に「ヤングアダルト」という対象について検証し,ヤングアダルト系出版物の範囲の確認をした。その上で,図書館におけるヤングアダルト向け資料を整理した。発表では,マンガ,文庫・ライトノベル,BL本,ケータイ小説,電子メディアのそれぞれの特徴,批判されるポイント,人気のポイント,動向,人気作家やシリーズについてそれぞれ解説した。
図書館界においては,1980年頃からの有害図書問題などに代表されるようにヤングアダルト系出版物への風当たりは厳しいものがあった。2008年には,堺市立図書館のBL本問題も記憶に新しいところである。
しかし,それ以上にフロアの関心は「定義の曖昧さ」に集まった。ヤングアダルトは図書館業界と小売業界で定義されている年齢は異なるし,ライトノベルの範囲も明確でない。図書館におけるヤングアダルト向け資料=ヤングアダルト系出版物ではないこと,ヤングアダルト向け資料は「ヤングアダルトが求めるもの何でも」であって,実際は一般書であることが多いことからも,ヤングアダルト系出版物とは定義に縛られず,出版社によってプロデュースされていると考えられることが指摘できる。
これからも益々発展していくであろうこれらの資料は日本を代表する文化の1つのジャンルとなりつつある。ヤングアダルト系出版物はヤングアダルトだけが読んでいる訳ではなく,対象年齢の広がりを見せるとともに,メディアミックス化,電子媒体での提供などが盛んなコンテンツとして,人気を博しているのである。
(村木美紀)