2016年度事業計画(2016年4月1日~2017年3月31日)

 1969年に設立された日本出版学会は,学術研究団体として,確固たる地位を築きつつある。デジタル・ネットワーク社会における出版メディアのあり方は劇的に変化し,出版研究の重要性はますます高まっている。出版研究が新たな段階に入っていると捉え,出版および出版学の射程を広げるとともに,原点を確認する研究活動を進める。
 そこで当学会は,従来の出版研究の諸分野の活動を以下のように継続・拡大するとともに,学会設立50周年(2019年)にむけて記念事業の企画を検討し,次の世代に対する責任を果たしたいと考えている。

1.研究活動の推進と充実

(1) 研究部会活動の推進
 当学会の活動がその規模に比較して活発である背景には,多様な部会活動があるといえよう。今後とも会員の期待に応えるべく,さらに積極的な部会活動がおこなわれるように努力したい。
(2) 研究発表会の拡充
 春季および秋季研究発表会において積極的な発表が続いており,活発な議論が行われている。また時代の研究課題に応えるシンポジウム,ワークショップの企画や,基調講演もあり,毎回,多数の参加者を数えている。今後とも,学術的水準向上の観点から,研究発表会をより充実させるため,会員の積極的な発表や会員間の討論の場を増やしていきたい。
(3) 学会誌の発行
 『出版研究』第47号の企画・編集を進め,年度内の発行を予定する。

2.研究活動のネットワークの拡大

 1984年10月に最初の国際出版研究フォーラム(IFPS)が韓国ソウルで開催された。以来,30年あまりの間に我々は様々な交流を通じて,より内容を深めた議論をおこなう段階に到達している。IFPSの継続運営や海外在住会員との恒常的な連携,また部会活動を通じた国内の研究者間のネットワークも拡大している。我々はこの方向を踏襲して歩みたい。また,本年,中国で開催が予定されている第17回IFPSに参加し,各国との研究交流をすすめたい。

3.会勢と財政の充実

 当学会は当初66名の発起人によって設立されたが,現在,会員数は約350に至った。しかし,学術研究団体としては決して多い数ではなく,その社会的使命を果たすためには,より多くの会員を擁することが必要と思われる。日常の部会活動や各種の刊行物を通じて,会員の獲得,会勢の充実を期したいと考えている。
 また,学会財政は,長期にわたって出版産業の経済活動が停滞していることも要因となって,厳しい状況にある。ここ数年の経費節減の取り組みによって,現在は均衡を保っているものの,さらなる経費節減を進めている。

4.広報活動の充実

(1) 『日本出版学会会報』
 本年においては2号の発行を予定し,内容の充実を図る。
(2) ウェブサイトの拡充
 ウェブサイトの情報発信力を高め,会員間の情報交換を密にする。また会報との連動によって学会の公知化に資することとする。

5.日本出版学会賞の審査・授与

 学会創立10周年を記念して創設された日本出版学会賞は,その後,20周年,30周年,35周年,40周年記念事業の中においても位置づけられ,毎年の経常的事業として継続されている。本年も日本出版学会賞の審査・授与をおこなう。
 また,『出版研究』に掲載された論文を対象にした「清水英夫賞(日本出版学会優秀論文賞)」を新設し,将来性に富む優れた研究論文を顕彰する。

6.特別事業(50周年記念事業)

 学会創立50周年を記念する事業に取り組む。
(1) 募金活動
 募金活動はあらゆる機会をとらえて積極的に継続する。
(2) 本の学校出版産業シンポジウムへの協力
 9月の東京国際ブックフェアに合わせて開催されるNPO法人本の学校が主催する「本の学校出版産業シンポジウムin東京」に協力する。

7.『出版研究』の電子化

 『出版研究』の電子化による公開を検討し,実施する。

8.「日本出版学会倫理規程」(仮称)策定の検討

 会員としての研究・教育および学会運営にあたって依拠すべき基本原則を定めた「日本出版学会倫理規程」(仮称)の策定を検討する。