雑誌研究教育を行うゼミ運営上の可能性と問題点 辻 泉 (2015年3月2日)

■出版教育研究部会 発表要旨(2015年3月2日)

雑誌研究教育を行うゼミ運営上の可能性と問題点


辻 泉(中央大学文学部教授)
 

 2014年度第二回の出版教育研究部会では、日ごろ私が大学で指導しているゼミの教育内容について、報告させていただいた。あわせて、指導学生からも、当該年度の研究成果について報告させていただく中で、こうした研究・教育の現状における問題点と可能性について、議論を深めることができた。改めて、お招きいただいた部会長の清水一彦先生、幹事の蔡星慧先生にこの場を借りてお礼申し上げたい。ありがとうございました。さて概略は以下の通りである。
 報告内容についてだが、「1.FLPジャーナリズムプログラムとは何か?」「2.FLP辻ゼミとは何か?」「3.研究成果紹介(指導学生から)」「4.まとめとディスカッション」といった4部構成で行った。
 1については、報告者が出版に関連して雑誌研究を行っている、FLPジャーナリズムプログラムにおけるゼミについて、そもそもFLPとは学部横断型のゼミナールであること(Faculty Linkage Programの略)、また中央大学全体での出版教育の現状について、といった点に関する説明が行われた。
 次いで2では、その中での辻ゼミがどのような教育を行っているのか、説明がなされ、いわゆる大手のマスコミやニュースメディアを志向するゼミナールとは違い、むしろ文化社会学的な面白さ、ポピュラー文化の興味深さに注目する教育内容であることが強調された。それゆえに、研究成果についても、きっちりとした報告書をまとめる以外に、フェイスブック上に、今年度であれば男性ファッション誌のオンライン年表(タイムライン機能を利用したもの)を作成したり、あるいはゼミオリジナルのウェブページ上で成果を公開するなど、受動的な授業ではなく、むしろ創造的なアウトプットを重視するゼミナールであることが示 された。
 その上で3では、実際の指導学生数名によって、今年度の研究対象である男性ファッション誌の研究を基にした成果の報告が行われた。昨今では、出版メディアと同様に、男性たちもライフスタイルの将来展望に迷う時代であり、この点で、それぞれに試行錯誤がなされるべき状況であること、また男性向けにこうしたメディアを持ちえているのが日本社会の独自の特徴であり、それを生産的に捉えていくことの必要性などが論じられた。
 最後の4では、こうした内容を受けて、今後の研究の進展について、アカデミック志向をどこまで強めて、さらに指導を徹底するべきなのか、それとも実学を重んじて、むしろ学生たちの直近のニーズに合わせるべきなのか、あるいはこうした点のバランスを以下に取るべきかなど、実践的な課題をめぐるディスカッションが、会後の懇親会を含めて、非常に盛んになされた。
(文責:辻 泉)

*部会参加者17名(会員14名、非会員3名、於日本大学法学部本館第2会議室)