■ 出版教育研究部会 発表要旨(2010年5月14日)
「出版論」の講義について
諸橋泰樹
1.担当科目
1992年~1999年 「出版論」(通年科目)尚美学園短期大学
1999年~2004年 「現代文化批評」(半期科目)フェリス女学院
2004年~現在 「新聞・出版ワークショップ」(半期科目)フェリス女学院大学
2007年~現在 「新聞・出版論」(半期科目)中央大学
*いずれも学部・学科専門科目として開講,フェリスと中央は全学開放科目
*フェリスの「現代文化批評」は,前期出版論,後期フェミニズムマンガ批評をやっていた
*フェリスの「新聞・出版ワークショップ」は,新聞編と出版編を隔年開講
*中大の「新聞・出版論」は,前期を「新聞論」(赤尾光史さん),後期を「出版論」としている
*尚美時代は100人ほどの受講者数,フェリスは50人ほど,中大は100人ほど,といったところ
2.短大教員時代の授業の目論見…出版社志望の学生たちに,出版業のなんたるかを教える
①自分が考えるほど華やかな世界ではない
②企画力,人づきあい能力,日本語力,インテリジェンス,体力,きめ細やかさ(こだわり)が求められる
③出版を「産業」としてとらえ,データでものを考える
④短大から入れる出版社はごくわずかであり,「夢」から醒める(c.f.「『マスコミ・出版教育』と『就職』-専攻する学生に道は開かれているのか」『出版ニュース』1992年12月中旬号,のち『雑誌文化の中の女性学』明石出版,1993年に所収)
⑤出版の自由,再販制度をはじめ,出版に関する法制度から成り立っていること
3.フェリス・中大での授業の目論見…出版現象を通じて社会科学的な視点と方法を身につけ,「産業」「会社」としての出版社のありようから自分のキャリアデザインと重ねる ①出版を「産業」としてとらえ,データでものを考える
②1つの「商品」が,多様な知性と専門家ときめ細かな目配りからなっている
③企画力,人づきあい能力,日本語力,インテリジェンス,体力,きめ細やかさ(こだわり)が求められる
④本を読むことを奨励するとともに,出版の未来について,ケータイやインターネットだけで果たしてよいのか考える
⑤出版の自由,再販制度をはじめ,出版に関する法制度から成り立っていること
4.授業創設以来からやっていること,あるいは「ワークショップ」のゆえん
①編集者仕事の模擬体験②『本作り これだけは』視聴③出版企画書づくり④自分が好む作家,雑誌,マンガ家などの小アンケート⑤読書データからグラフづくり⑥出版年鑑データからグラフづくり⑦ABCデータからグラフづくり⑧電通広告量データからグラフづくり⑨出版指標年報データからグラフづくり⑩自分の日本語力や入社試験の難易度を知る⑪雑誌内容分析⑫出版の将来についてのレポート
5.今後の課題
①いかに文字離れ,教養離れ,本離れを食い止めるか(フェリスでは新聞閲読者は皆無,『1Q84』も皆無)
②電子出版を,現物を使いながらワークさせてみたい
(諸橋泰樹)