■日本出版学会 雑誌研究部会・出版史研究部会
日本出版学会賞 受賞記念講演会(彭永成 氏) 開催報告
「「プラットフォーム型雑誌」『ゼクシィ』の再検討
情報誌研究の可能性に着目して」
彭永成(桃山学院大学)
『『ゼクシィ』のメディア史――花嫁たちのプラットフォーム』(創元社刊)にて第45回(2023年度)日本出版学会賞奨励賞を受賞した彭永成氏による講演会を雑誌研究部会と出版史研究部会の共催によりオンラインで開催した。
彭氏から受賞著作の内容について、さらに著作発行後の研究の進展も踏まえ、今後の発展についての講演が行われた。
彭氏はまず、『ゼクシィ』本誌が情報の細分化と量的な統合を通じて、誌上で提示する結婚の理想像を読者である花嫁たちの願望に接近しながら、「プラットフォーム型雑誌」としての役割を確立していく過程を整理した。本誌に加え、『ゼクシィ』の地方版、大人版、海外版、ウェブ版といった関連媒体についての分析も展開し、これら「分身」メディアが「プラットフォーム型雑誌」という理念形にどのように貢献し、また挫折しながら支えとしての役割に甘んじるようになったかという歴史を明らかにした。
結論では、「プラットフォーム型雑誌」という概念が、結婚というライフイベントに限定された情報メディアの理想形としての枠組みを超えない点が限界として指摘された。
また、『ゼクシィ』の変容が情報誌メディアの可能性を示唆する一方で、その意義を相対化するための比較対象として、同じくリクルート社発行の『とらばーゆ』が取り上げられた。
『とらばーゆ』は、1980年に創刊された日本初の女性向け求人情報誌として、27年に及ぶ発行の歴史を通じて、女性の就労に関わる社会情勢の変化にどのように対応したかが問われた。この『とらばーゆ』に関する分析は、情報誌メディアの特殊性を明らかにするだけでなく、女性のライフコース意識の変容とメディア利用との関係性について、新たな知見を提供する可能性を秘めている。
以上のような報告の後に質疑応答がなされ、既存の雑誌研究との差異に関する質問や『とらぱーゆ』に関して創刊時の社会状況を知る参加者から、転職に対する当時の意識や世間での捉え方などについてのコメントが出され、活発な議論がなされた。
日 時: 2024年10月30日(水) 午後7時00分~8時30分
会 場: オンライン開催
参加者: 参加者25名(会員16名、一般9名)