「ライプニッツ著作集」十川治江(2023年7月21日)

■ 出版翻訳研究部会 開催報告(2023年7月21日開催)
 
出版翻訳研究部会 7月講演会概要
『ライプニッツ著作集』
(本年度テーマ「翻訳全集・選集」の第3回目)

講師:十川治江(工作舎元代表)

 
 十川さんは青年期に、雑誌『遊』(工作舎刊)の小特集を編んでライプニッツに興味を抱いた。記号論理学の創始者として後世に多大な影響を及ぼしたことに瞠目したのだ。当時のライプニッツの邦訳状況は、哲学の短編のいくつかが紹介されているのみで、論理学や数学などの著作を日本語で読むことはできなかったので文系と理系を統合するような著作集を編みたいと思い立ち、以来40年にわたり、編集者としてライプニッツに付き合うこととなった。
 今回の講演の聴講者は門外漢が多いため、「ライプニッツを好きになってほしい」という観点から、ライプニッツを取り巻く人々を紹介しながら、天才ライプニッツといえども人との出会いによって成長しつづけ、書簡や著作を残していたことに力点が置かれた。時代とその背景、ライプニッツの境遇と人物そのものが浮かび上がる配慮が感じられた。逐一例を挙げるのは控えるが、関係者の肖像画と事績がスライドに示され、事実関係の口頭による説明と相俟って理解が増した。
 質問では、当著作集の質を高める努力の在りよう、編プロの傍ら出版に携わる力配分、商品としての著作集の採算性、が問われたが、残り時間も少なく、概括的な返答を得るにとどまった。いずれも出版当事者が日常的に抱える問題であり、今後分科会や各自のレポート発表などの形で、掘り下げてゆく必要があるだろう。
 
日 時:2023年7月21日(土) 19:00~20:30
会 場:文京シビックホール小会議室
参加者:20名(会員5名、非会員15名)

(文責:柴田耕太郎)