第9回日本出版学会賞 (1987年度)

第9回日本出版学会賞 (1987年度)

 第9回日本出版学会賞の審査は,日本出版学会賞要綱および同審査細則にもとづき,1986年10月1日から87年9月30日までの1年間に発表された,出版研究の領域における著作を対象にして行われた.
 審査会は,1987年12月7日から88年3月15日までのあいだに,計4回開かれた.審査作業は,審査会の委嘱により大久保久雄委員が収集した対象期間内出版関係著作リスト,および会員からの推薦(アンケートによる)を基礎として開始された.
審査は,学会賞の対象が「出版研究の領域における著作」であることから(日本出版学会賞要綱第1項),先ず,一見してそれに該当しないものを除外し,残余のものについて,選考を重ねた.その結果,今回は,残念ながら,授賞および佳作に該当する著作は,見出しえない,という結論となった.
 最終選考に委ねられた著作は,次の通りである.
 遠藤諦之輔『古文書修補六十年』(汲古書院)
 杉原四郎『日本の経済雑誌』(日本経済評論社)
 奥平英雄『絵巻物再見』(角川書店)
 津村憲文『広島修道大学総合研究所』
 これらのうち,特に注目されたのは『古文書修補六十年』である.この本の著者・遠藤氏は,惜しくも最近物故されたが,長年にわたって古文書の修補に携わってこられた人である.特に1940年以降,宮内省図書寮(現在の書陵部)に招かれて,貴重な古文書,古典籍の修補・復元に努力され,大きな功績を挙げた.当該著書は,著者のいわゆる“職人芸”の集大成ともいうべきものであり,単に修補の技術の教本たるにとどまらず,古文書の研究者にとって不可欠の資料といえる.しかし,“出版学の領域”という点で,学会賞の対象としては否定的な結論となった.


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