日本出版学会の創立を記念して取り組みを行った募金活動や,国際シンポジウムは大きな成果を収め,本年中の刊行を予定している学会史も最終段階を迎えている。今後継続される日本出版学会賞を別にすれば,創立35周年を記念する一連の事業は一応の終結を迎えることになる。
そのような中で,今年度学会は以下のような活動と事業をめざしたいと考えている。
■ 1.研究活動のネットワーク化の拡大
前期の活動を通じて当学会は,国内外の出版研究者に呼びかけ,出版の歴史や文化,経済,技術,教育等の諸問題に関する討論を行った。そのような中で明らかになったのは,今後の国際的な交流と協力である。当学会は,研究者のネットワークを国内の他学会にも広げると同時に,国際的なネットワーク化にも努力し,研究情報の円滑な流通と,人材の育成や教育内容の充実をめざしたいと考えている。
■ 2.会勢と財政の充実
学会創立以来すでに38年目を迎えて,学会員の世代交代は進み,新しい世代の研究者の結集が求められている。幸い,広報委員会の活動に伴う学会の公知化は次第にその成果をあげつつあるが,学術研究団体としては未だ小規模であり,今後一層の会勢拡大が必要である。
また,円滑な学会運営を行うためには,学会財政の構造上の充実がさらに必要であり,長期的に安定した財政の確立が求められている。
■ 3.事業
(1)調査研究の推進
1 研究部会活動の推進
当学会の今日に至る過程おいては,部会活動の果たした役割を無視することができない。部会活動のあり方は時代と共に変化するが,その運営内容の充実に向けて,今後共学会全体として取り組む方針である。
2 研究発表会の拡充
春季研究発表会における研究発表の機会は,研究成果の公表や討議において重要な場となっている。同時に,近年活発な活動を行っている関西委員会を中心とした秋季研究発表会に対しても,学会全体としての取り組みを行いたい。
(2)学会誌・会報の発行
1 学会誌『出版研究』
第38号の企画・編集を進め,年度内の発行を予定する。
2 『日本出版学会会報』
本年においては3号の発行を予定し,内容の充実を図るとともに,ウェブサイトとの連動によって学会の公知化に資することとしたい。
3 会員名簿の改訂
すでに準備は行われているものの,刊行には至らなかった学会員名簿の刊行を実現したい。
(3)国際交流の促進
過去12回にわたって開催された国際シンポジウムを中心とした国際交流の機会は,学生や研究者の交換としても多様化し,充実しつつある。とりわけ,2008年度には,第13回国際出版研究フォーラムが韓国で開催される予定であり,当学会においても計画の発表に対応した協力と準備を行いたい。
(4)日本出版学会賞の審査・授与
学会創立10周年を記念して創設された日本出版学会賞は,出版研究の進展に有効な役割を果たしていると考えられるので,35周年記念事業の方針にのっとり,今後も継続の方針である。当期においては,第28回日本出版学会賞の審査・授与を行う。
(5)学会創立35周年記念事業の完成
学会創立35周年記念事業の一環であった募金活動は,すでに,前期において終了しているが,周年事業の中で新たに設置した「出版研究国際交流基金」に対する任意の寄付は今後共受付を行う。
また,周年事業については,2007年中に刊行が予定されている学会史の刊行によって終了し,日本出版学会賞は継続されることになる。
なお,当期は,役員の改選期に当たり,選挙管理委員会を設置して選挙を実施する予定である。
当学会は,周年事業をひとつの区切りとして次の段階へと歩を進め,研究者の幅広い結集を呼びかけると共に,研究情報の流通や蓄積においても今後一層その役割を果たして行きたい。