遠藤千舟
日本出版学会創立35周年を迎えた2004年度を契機として,我々は各種の記念事業を計画し,そのために必要な資金を3年間にわたって募金することを決定した。募金は,予定通り2007年3月末をもって終了したので,他の関連事業の状況も含めて以下経過を報告したい。
目標を上回った個人募金
2007年3月末日をもって締め切られた個人募金の合計額は,目標額の240万円を1割以上も上回る2,682,090円であった。法人は1,474,840円で,寄付金総額は,4,156,930円。これは,当初の予定額を下回っているが,実際は,国際シンポジウムの費用総額の三分の二は,シンポジウムを東京経済大学と共催することによって同大学が負担し,学会史の出版にかかわる直接の編集費用は第三者の機関が負担することになっているので,実質的には,当初予定した内容を上回るものとなっている。35周年記念事業を企画した当初は,学会財政の赤字構造を解消すべく思い切った合理化を行っている時期でもあり,これらの成果は,ひとえに,学会員各位の理解と協力なしには達成できなかったと考えている。
大きく前進した国際交流
周年事業の一環としての国際シンポジウムは,すでに各所で報告している通り,2006年10月28日~29日の両日東京経済大学で開催され,基調講演も含めて24名の発表が行われ,延べ214名が参加した。ここで行われた発表内容は,当日配布された予稿集以外に,『出版研究』(37号)や,『東京経済大学学術研究センター年報』(7号)に掲載されている。今回の国際シンポジウムは,第12回国際出版研究フォーラムとして開催されたものであるが,第13回は,2008年5月に,韓国ソウルで開催されることがすでに確定している。このような国際交流のためには,今回の周年事業で制定された「出版研究国際交流基金」が活用されることになっており,同基金は,当学会の創立メンバーである清水英夫名誉会長の寄付金が契機となって制定されたものである。
その他の周年事業
我々が今回の周年事業でめざしたもののひとつには,日本出版学会賞の継続が含まれている。これは,創立10周年を記念して制定されたものを継承するものである。これを継続していることは,多くの研究者を生み出すと同時に,研究成果を広く社会に提供することにも役立っている。
もうひとつの事業は,日本出版学会史の編纂と刊行であり,2007年度中の刊行をめざしている。
今回の周年事業への取り組みの隠された成果は,実は学会運営を担う次の世代の人たちが多数育ったことである。多くの研究者との共同の作業なしには,我々はここまでたどり着くことはなかったし,今後もいかなる目標も達成することはできないと考えている。
(創立35周年記念事業委員会委員長)