第2回 小中高校でのMIE実践に応用できる、大学での雑誌作り教育の実例報告
牛山佳菜代 (目白大学メディア学部メディア学科准教授)
大曽根薫 (聖徳大学短期大学部非常勤講師)
雑誌作りはアクティブラーニング、つまり「主体的・対話的で深い学び」に役立つことが期待できる。しかし、小中高校の授業ではまだその指導方法が確立されているとは言い難く、導入しはじめた学校でも試行段階である。一方、出版教育の一環として雑誌作り授業の指導方法も確立し、アクティブラーニングとしての教育効果を上げている大学はいくつかある。そこで目白大学のメディア表現学科(現メディア学科)の3年ゼミでの例を牛山佳菜代会員に、また聖徳大学短期大学部での例を大曽根薫会員に紹介いただいた。
牛山会員は雑誌作りの指導法の一例として、目白大学でメディアを専門的に学ぶ学生を対象としたゼミで行っている小冊子の制作プロジェクトについて報告した。本プロジェクトは半年間かけて学生の情報発信力を高めるために行っている活動であり、学生自身が企画、アポ取り、取材、記事執筆、レイアウト等の小冊子作成のほぼ全てのプロセスを自分たちで行っている点が特徴である。
この活動により、受講生の冊子作成に関する専門的スキルはもちろんのこと、企画力、分析力、対応力、傾聴力、継続力などの実社会に通じる能力向上につながっており、プロセスを凝縮することで高校等にも応用できるのではないかと述べた。しかしながら、実際に高校等で活用するためには、適切なテーマ設定と目標設定・進捗管理、取材協力先の確保等が必要になることを指摘した。
大曽根会員は聖徳大学短期大学部の出版教育の一環として、DTPソフトを使用した雑誌制作の授業「編集技法Ⅰ、Ⅱ」と、DTPソフトを使用しない授業「出版文化論」の2例を紹介した。「編集技法Ⅰ、Ⅱ」では、おもにillustrator、Photoshop、InDesignを使用し、春学期で個人作品(レシピブック)、秋学期でグループ作品(キャンパス情報誌)を制作。DTPソフトの習得だけでなく、企画、取材、原稿執筆、レイアウトなど雑誌づくりのプロセスを体験する。また、「出版文化論」では、雑誌分析、女性雑誌記事のタイトル作成、女性誌『Hanako』のスイーツ特集企画案制作などを行っている。
こうした雑誌を活用した授業では、「自ら企画し、提案する力」を養うことが期待できるだけでなく、グループ制作によるメンバー同士の関係調整能力、著作権・肖像権などの知識の習得、社会におけるさまざまな仕事の発見なども可能であるとした。
この2例が示したように、それぞれの雑誌作りの背景や目的が異なるためにその方法論にも差がある。本研究会では、その差異を知ると同時に、大学での実例がどのように小中高校レベルでの雑誌作りに応用できるかを今後も議論していく予定である。
日 時: 2019年9月26日(木) 18:30~20:30
会 場: 専修大学神田キャンパス7号館3階731教室
参加者: 23名 (会員9名、学生14名)
(文責:富川淳子)