情報バリアフリーをめざして――広がりつつあるSPコード(第3報)  深見拓史 (2010年4月 春季研究発表会)

■情報バリアフリーをめざして――広がりつつあるSPコード(第3報)
 (2010年4月 春季研究発表会)

 深見拓史

 厚生労働省は,視覚障害者用活字文書読上げ装置「スピーチオ」,「スピーチオプラス」(*)を日常生活用具として認定し,視覚障害者1級,2級の方には,自己負担額10%で給付している。「スピーチオ」「スピーチオプラス」(*)に対応した,新しい2次元シンボル「SPコード」(**)付き印刷物が少しずつ広がり,高齢者や視覚障害者に対する情報バリアフリーが進んでいる。これらについて報告した。
1.「SPコード」と「スピーチオ」「スピーチオプラス」の概略
 「SPコード」は英・数字のみならず漢字・かなを含み,標準サイズ18mm*18mmに日本語で約800字を格納でき,この「SPコード」を専用読上げ装置「スピーチオ」「スピーチオプラス」に読み取らせると,音声で読上げる。「スピーチオ」「スピーチオプラス」は,印刷物から情報を得ることが難しい高齢者や視覚障害者を対象に開発されたものである。
2.広がりつつある「SPコード」
 情報バリアフリーを推進する自治体,企業は増加し,高齢者や障害者に対する配慮が社会的に注目されている。視覚障害者の内,点字が読める人たちは10%以下といわれており,高年齢での中途失明者にとって,点字を覚えることは難しい。またパソコンを使える視覚障害者が増えているといわれているが,やはり10%以下といわれている。一方,印刷物作成時にあらかじめ情報を「SPコード」化しておけば,誰でも簡単に「スピーチオ」「スピーチオプラス」で音声に変えることができる。
 官公庁,地方自治体では「広報誌」,「通知文」などへの利用を考えている。例えば,島根県安来市では「広報やすぎ“どげなかね”」に,滋賀県東近江市では,「国民健康保険料決定通知書」,「福祉医療費受給券の更新について」など個人宛お知らせに,東京都練馬区,中央区,川崎市などにおいては「福祉のしおり」に「SPコード」を付けて,区の福祉施策の概要とサービス窓口を紹介している。
 日本年金機構(旧社会保険庁)では,平成21年度「ねんきん定期便」の封筒にSPコードを付けて全国民約7000万人に配布した。平成22年度も継続している。また製薬会社約30社で構成される,「くすりの適正使用協議会」はホームページ上で,会員企業が製造販売している約7000種類のくすりの情報に「SPコード」を付けて,いつでもダウンロード,プリントアウトが可能となっている。
 一方,一般企業でも企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)活動の一環として取り上げるケースが現れている。日本ハム,ダイエーなどである。また三井住友海上火災保険,ヤクルトなどでは,商品チラシに,ライオンは「製品情報(大活字版)」に「SPコード」を付けている。また,国際標準化のための規格作成の活動も開始した。

*スピーチオ,SPコードは,(株)廣済堂の登録商標,スピーチオプラスは商標申請中
**SPコード公式ホームページ http://www.sp-code.com/