「4コママンガの読みの変化――縦書きと横書き,コマ割りの観点から」 村木美紀 (2019年5月11日 春季研究発表会)

2020年 2月 01日(土曜日) 17:04
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4コママンガの読みの変化――縦書きと横書き,コマ割りの観点から


村木美紀
(同志社女子大学)


1 はじめに

 日本のマンガが海外で翻訳されて出版される際には,中国や韓国などの縦書き文化では問題ないものの,左綴じ右開きの横書き文化の場合,制作をし直すことになる。そういった手間を省き広く頒布するために,英語を用いるアジアの地域では自国のマンガを左綴じ右開きの横書きで出版しているものもある。
 日本のマンガも今後は変化することになるのか,その可能性を検証することが本研究の目的である。

2 研究の方法

 方法として,4コママンガに注目し,縦書き/横書きとコマ割りについて分析した。4コママンガを対象としたのは新聞に掲載されていること,小学校の教科書にも取り入れられていること,「記号」を用いれば誰もが簡単に制作できることによる。4コママンガは,筆者が所属するメディア系学科で担当している「マンガ文化論A」の授業で提出を求めた制作課題とし,コマ割りの読み順と吹き出しが縦書きか横書きかを分析した。4コママンガのフォームは,一般的にイメージされる1コマが縦に4つ連なっているものではなく,2行×2列のものとした。その理由は,新聞4コマにもそのスタイルが取り入れられるようになっていること,自由な制作が出来るのではないかと考えたこと,他大学のマンガ系の学部における制作課題において同様の書式が用いられていたことによる。なお,2017年度と2018年度の2年分を対象とした。

3 4コママンガの分析結果

3.1 コマ割りの並び
 課題の制作にあたって,コマ割りの順は指定しなかった。その結果,初年度の2017年は54作品で5つのパターンが確認できた。最も多かったのは右上スタートでN字を描くパターン1の35作品(64%)で,次いで左上スタートでZ字を描くパターン2が13作品(24%)であった。他の3パターンでは計6作品と少数であったが。このように複数のパターンが出てくることは想定しておらず,翌2018年も同様に課題を出した。
 その結果,2018年は2017年と同じ5パターンに新たに3パターンが加わった全8パターンに増加することとなった。ただし,そのうちの2パターンは作品の仕掛けによる特殊なものであった。2018年も全89作品中,パターン1が56作品(63%)と最も多く,パターン2が19作品(21%)と続く。それ以降の2017年と同じ3パターンは計9作品で,新たな3パターンが計5作品であった。パターン1と2の大きな違いは縦に読むか横に読むかであるため,文字の並びが影響しているのかも検証した。

3.2 文字の並び
 吹き出しの文字の並びについても分析を行った。吹き出しが無いものについては,モノローグや解説の文字の並びを確認している。効果音やオノマトペについては分析の対象外とした。なお,文字が無くイラストだけの作品も複数見受けられた。2017年よりも2018年の方がそのような作品が増加していた。2017年ではいずれのパターンでも圧倒的に縦書きが多いことが分かった。2018年においても吹き出し,モノローグや解説ともに縦書きが多数であることには違いないが,パターン1の吹き出しが,縦書きと横書きの両方あるものが10作品(18.5%)あることが特徴的である。

4 考察

 手書き作品とデジタル作品では手書き作品の方が横書きが散見された。コマ割りの並びが横の方が割合としてはやや横書きが多いものの,縦書き横書きの両方あるものが増加しており自由に作成していることが分かる。なお,デジタル作品であったり,手書きであってもペン入れやスクリーントーンを使用した作品等,普段からマンガを描いていることが伺える作品の方が,コマ割りも縦並び,吹き出し,モノローグや解説の文字の並びも縦であることが分かった。全員からは回答を得られなかったものの,結果に対する理由を尋ねたところ,マンガとはそういうものであるというイメージや,Pixivや同人活動でそのように作成しているからということであった。一方でコマの横並びや文字の横書きについては,「特に何も考えなかった」,「紙が横だったので横にした」,「紙が横だったのでその方がやりやすいと思った」,「スペースの関係で縦横混在させた」,という意見があった。

5 おわりに

 質疑応答では,「対象を4コママンガにしたのは面白かった」という意見や「フォームの4コマは自由でもタイトルと名前を書く欄が横書き設定だったために縦/横をどう使うか影響を受けた学生もいるのではないか」という意見が出た。
 分析対象とした4コママンガは1枚物のプリントであったが,例えば,製本すると綴じと開く向きが生じるためにスタイルが変わることも考えられる。また,4コママンガならではのレイアウトを利用したユニークな作品-流れをつけたり,エンドレスで読めたり,コマをぶち抜いたり-も登場しており,そういった柔軟な発想にも注目していきたい。