「電子書籍の音声読み上げ機能を活用した読書アクセシビリティの保障」湯浅俊彦 (2015年12月 秋季研究発表会)

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電子書籍の音声読み上げ機能を活用した読書アクセシビリティの保障


湯浅俊彦
(立命館大学文学部)


 この発表は,これまで紙の出版物を読むことが困難であった視覚障害者や発達障害者を対象に,電子書籍の音声検索や音声読み上げ機能を活用して,「読書アクセシビリティ」を保障するための方策を検討するものである。本研究の目的は,著作が読まれることによって初めて価値が生じる出版というメディアへのアクセシビリティを高め,読書困難者を含む社会の構成員のすべてが著作を利用することができる環境を醸成し,出版メディアの未来を切り拓くことにある。
 発表者は,立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)研究プログラムのIRIS(Integrated Research of Accessible Ebooks:Interfaces & Services=電子書籍普及に伴う読書アクセシビリティの総合的研究)の研究グループの一員として,電子書籍による音声読み上げ実証実験に参加した(注1)。これは大日本印刷,図書館流通センター,日本ユニシスと協定を結び,2015年2月から3月にかけて三田市立図書館において視覚障害等を有する三田市民の利用者を対象に,全国の地方自治体初の公共図書館における電子書籍を活用した音声読み上げサービスの実証実験であった(注2)。本実証実験では視覚障害者等による利用を想定し,図書館流通センターが公共図書館向けに提供している電子図書館サービス「TRC-DL」の検索システム,ビューワ,コンテンツについて改善すべき点を明らかにすることを目的として,アクセシビリティの検証を行った。
 実証実験では,2015年1月30日,13:30~15:40「実証実験説明会」(三田市総合福祉保健センター)を開催し,三田市内在住の視覚障害者が交流する場としての 「あいあいサロン」にて20名の視覚障害者と介助者を対象に実証実験について説明を行い,実証実験に参加していただけるモニターを募集した。そして2015年2月20日,「第1回実証実験」(三田市立図書館,4名),2015年3月6日,「第2回実証実験」(三田市立図書館,6名)というように三田市民の10名の方々にご協力をいただき,実証実験を行った。
 実証実験ではPC版とタブレット版の実験サイトを体験してもらい,10名の被験者を対象にアンケート調査を行った。また,発表者が対象者にグループインタビューを行った。なお10名のうち9名が視覚障害を有する方々で,1名は四肢障害を有する方である。
 その結果,電子書籍の音声読上げ機能を導入していても,ログインすること自体や,電子書籍の検索や選択が視覚障害者等にとって使いづらいものである限り,自由に読書を楽しむ環境を提供できないことが明らかになった。
 この実証実験の結果を踏まえ,2016年4月の「障害者差別解消法」施行に向けて,立命館大学と大日本印刷,図書館流通センター,日本ユニシスは主に公共図書館への音声読み上げシステムを活用した新たな電子書籍貸出サービスを実現すべく,その製品化を行う予定である。


1)立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)研究プログラム「電子書籍普及に伴う読書アクセシビリティの総合的研究」IRIS(Integrated Research of Accessible Ebooks: Interfaces & Services)http://r-iris.jp/(参照:2016-03-10)
2)「音声で本検索『電子図書館』障害者に対応,三田で実験」『神戸新聞』2015年3月6日付けhttp://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201503/0007794821.shtml(参照:2016-03-10)