「大学図書館における電子ジャーナル購入の歴史」中村 健(2017年12月 秋季研究発表会)

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大学図書館における電子ジャーナル購入の歴史
――公立大学図書館コンソーシアムが果たした役割とその特徴


中村 健
(大阪市立大学学術情報総合センター)


1.はじめに

 2000年代に活動した公立大学図書館による電子ジャーナル購入のコンソーシアムの歴史を探る。JUSTICE(大学図書館コンソーシアム連合)成立前史において、公立大学図書館コンソーシアム(以下、公立大コンソ)があったことは、現在、ほぼ忘れ去られたものとなっており、近年の学術情報流通および図書館情報学、出版学において触れられることはない。公開資料である『公立大学図書館協議会会報』『大学図書館実態調査報告』『学術基盤実態調査』および青木堅司・永井夏紀「公立大学図書館コンソーシアム活動とICOLC」『情報の科学と技術』55(3)2005、近内巳「日本国公私立大学コンソーシアム連合(JCOLC)の発展に向けて」『大学図書館研究』70、2004の2本の論文。公立大学図書館協議会(以下、公大図協)の相互協力委員で実務を取り仕切った吉井良邦氏(当時、大阪市立大学学術情報総合センター図書情報課課長代理)へのインタビュー結果をもとに事項の整理と成立した契約モデルの考察を行う。なお本報告でのコンソーシアムについての定義は「複数の機関が共同して電子ジャーナルなどの電子リソースの契約交渉・購入を行う組織」とする。

2.公立大学図書館コンソーシアムの歴史

 つぎの三期に活動をまとめることができる。

コンソーシアム活動調査の時代(1999-2001)
 1999(平成11、31回)年度公立大学協会図書館協議会総会で、相互協力委員会の活動として「公大図協における、電子ジャーナル共同利用コンソーシアム構築の可能性に関する基礎調査について」が承認され、廣井聰氏(奈良県立医科大学)が中心となり2001年度の総会で調査報告が提出された。

公立大コンソ活動期(2002-2005)
 2002年度(平成14、34回)公立大学協会図書館協議会総会において、コンソーシアム実現に向けた活動が了承され、相互協力委員会が事務局を担った。初年度は、相互協力委員会(大阪市立大学、札幌医科大学、茨城県立医療大学、横浜市立大学、大阪府立大学)とオブザーバー館として参加した静岡県立大学が活動を担った。出版社からの提案は大阪市立大学の吉井良邦氏を通じて委員会に諮られ、採択後、協議会参加館(約80館)にメーリングリストを使って連絡・協議を行った。西日本の大学の仲介役には大阪府立大学、東日本は横浜市立大学が担当した。公立大コンソ第1号となるのがシュプリンガー社の電子ジャーナルパッケージであった。交渉の担当は中井正勝シュプリンガー・フェアラーク東京副社長であった。その後、アグリゲータ系電子ジャーナルであるEBSCO社(当時の交渉の担当者は磯崎仁 EBSCO International Inc. 日本代表者、現EBSCO Information Services Japan(株)副社長兼営業本部長)、ProQuest社と成立する。一方、交渉したものの成立しなかったものとして、エルゼビア、J.Wiley、Blackwell、ACS、Gale、Medical Online、Serials Solutionがあった。吉井氏によると①ボランティアベースでの事務作業の限界、②スケールメリットの必要性の2点から、当時、私立大学図書館のコンソーシアムであるPULCに2005年度から参加するようになった。

アグリゲータ契約とPULC幹事館における公立大学の代表(2006-2010)
 大手出版社とのコンソーシアム契約はPULCを使うことが可能になったが、アグリゲータ系電子ジャーナルまでは扱っておらず、EBSCO社は2006年度まで、ProQuest社は2007年度まで公立大コンソで対応した。また、相互協力委員会は2010年度をもって活動停止を宣言した。

3.考察

1)シャカフ(Pnina Shacaf)のコンソーシアムのライフサイクルモデル(尾城孝一(2005)「図書館コンソーシアムのライフサイクル」『カレントアウェアネス』283参照)を使い、国立大学のコンソーシアムの規模や変化を比較した。
2)提案モデルの比較
 シュプリンガー社は3分野選択の分野別パッケージモデルおよびアグリゲータ系電子ジャーナルは、のちに公立大が参加するPULCより、医学薬学系の公立大が参加していた医図協・薬図協提案に近いモデルであったと指摘できる。吉井によると、メディカルオンライン(2005年提案)のように、医図協・薬図協コンソで契約しているからという理由で、公立大コンソでの成立に至らなかった事例があった。
3)購入予算の変化
 『大学図書館実態調査報告』『学術基盤実態調査』の図書館資料費における図書(洋)・雑誌(洋)・電子ジャーナルの比率の変化に注目した。公立大の変化で注目したいのは、図書(洋)の割合の減少の早さである。国立大学が14.9%(1999年)→9.2%(2010年)、私立大学が20.5%(1999年)→12.5%(2010年)と割合を減らしているのに対して、公立大学は21.7%(1999年)→6.7%(2010年)と私立大学の半分ぐらいの割合に減っている。吉井氏もインタビューで、国立・私立と比べて公立大学の予算基盤の弱さを指摘した。公立大学の図書(洋)の減少率が国立・私立に比べて早いことに注意したい。

4.まとめ

 1.公立大学コンソの歴史を整理し、三期に分け報告した(発表当日は年表を配布)。
 2.契約モデルは、医図協・薬図協コンソに近いものであった。一方、電子ジャーナル導入のための外部資金が国立・私立のように得られず予算的には苦しく、公立大学の図書(洋)の減少率は注目できる。