シンポジウムパネラー発言1 「日本型水平分業の確立を」 佐々木 隆一(2010年4月24日)

Eメール 印刷 PDF

シンポジウム「電子書籍産業の検証―コンテンツ流通、デバイス、知財ビジネス」パネラー発言1

日本型水平分業の確立を

佐々木 隆一 (モバイルブック・ジェーピー)

  1996年にインターネットの音楽配信の急激な発展が見えそうな中で、ミュージック・シーオー・ジェーピーという音楽配信の会社を作りました。 当時は、配信から課金まで。すべてシステムを自前で作らねばならず、苦労しました。その後、第3世代型の携帯電話サービスが始まり、ケータイはコンテンツを楽しむ端末になり、そのケータイ端末に向けた小説やコミックスの配信を始めました。

 音楽産業では、ネットの売り上げが全体の30%、1400億円程度になっており、電子書籍は500億円近くになっています。これは日本のケータイビジネスが進んでいるからで、ケータイでのコンテンツビジネスは4000億円以上になっています。そんな中で音楽配信事業者が権利者に報告する楽曲が4億件を超えていて、使用料を支払うためにそのログ解析をして報告書を各権利者に提出するために莫大なコストがか かるようになっています。

 ネットの販売は基本的に1曲ずつなので、楽曲の数が200~300万曲あって、販売サイトが1000社1万サイトとなると、大変な計算の量に なります。そうなると、「N対1対N」といっていますが、どこかに「1」を入れないと効率化できません。

 音楽の場合には、音楽の場合は権利が作詞家や作曲家などが持つ権利とレコード製作者が持つ著作隣接権に分かれており、両者の許諾を取る必要性がありますが、「著作権情報集中処理機構」という組織を配信事業者と権利者で作り、トランザクションの管理コストを極限にま で下げることで配信ビジネスで利益を出せるようにしようとしています。

 本も電子の場合は、1冊ずつの売り上げになるので、多数の出版社と多数の書店が個別に取引していたらコストが合いません。ですから、  取次が入ることで、なるべく“低い管理コスト”で、電子書籍を流通させようという考え方です。

 アメリカのアマゾンやアップルは、この「1」を1社でやっていますが、日本の場合は、この「1」が非常に小さく、コストを掛けずに行っているビジネスモデルです。

 デジタルコンテンツビジネスは、アメリカ型であれば、自社内ですべてのコストを吸収する垂直型統合モデルですが、日本のように多くの会社がビジネスを形成する水平分業の場合は、どこかに「1」を作っていくことが必要で、特に今後、電子書籍の市場が大きくなれば、その必要 性は増すと思います。

 日本の水平分業型を磨けば、世界に通用すると思っています。

 「著作権情報集中処理機構」は、世界でも初めての仕組みですが、著作権団体、配信業者が共同で設立しました。

 今、二つのことを考えています。

 一つは、「黒船」「赤船」が到来する中で、日本の電子出版流通サービスをどうするかということです。もう一つは、これからわれわれが、相手にする消費者は、生まれたときから、ケータイ電話がある人々だということです。

そういう世代がどういう形で文芸作品や雑誌にアクセスするのかを考えると、才能を育てて作品を作っていく出版社の役割も大きく変わると思います。

 その二つを踏まえながら、日本の電子出版の成長を皆さんと一緒に考えていただきたいと思います。