出版科学研究所のデータによると、2009年の新刊発行点数は78,555点(前年比2.9%増)で再び増加した。うち、取次仕入れ窓口扱いの新刊書は3年連続の増加で60,914点(前年比2.3%増)、注文扱いの出版物は、17,641点、5.3%増(891点増)となっている。
1日280点近い新刊書が、書店に委託配本されていることになり、新刊点数の増大が、新刊委託の展示期間を縮め、「返品率の増大」の一要因であることは否めないが、書籍返品率の推移を見れば、「新刊点数の増大と返品率の相関関係」は、必ずしもない。
書籍の返品率は、再び増加し、40.6%(金額返品率)となった。返品率が高い水準の「主要因」には、委託制度下における取次―書店間の取引条件が強く反映していると思われる。
一般に新刊委託品は、「出版社・取次間で6ヶ月、取次・書店間で4ヶ月」であるが、委託品に対する取次からの書店に対する請求は、通常、納品の「翌月から100%」行われている。
つまり、日本における「書籍の委託制度」は、「返品条件付の売買契約」であることになり、書店側からすれば、「4ヵ月後に精算される」とはいえ、「過払い」にならないように、「新刊書の返品を急ぐ結果」が、恒常的な「返品率の高さ」の主要因と見られる。
一方、出版社―取次間の委託契約は、6ヶ月間であるが、大手版元を中心に約300社あまりの出版社には、納品の翌月には「一定の条件支払い」が行われており、それがマイナス成長下にも関わらず、「新刊点数の増大を招く」、一要因になっている。
書籍の返品率は、「常備寄託品を含む推定返品金額を推定の出回り金額で割ったもの」、雑誌の返品率は「推定返品金額を推定発行金額で割ったもの」で表されている。
(文責:出版メディアパル/下村昭夫)