2009年度の出版物の推定販売金額の推移   下村昭夫 (2010年4月30日)

  出版物の推定販売金額の推移 
 

 出版科学研究所のデータによれば、2009年の取次ルートを経由した出版物の推定販売金額は、1兆9336億円と前年より4.1%減少、21年ぶりの2兆円割れとなった(出所:『出版月報2010/01』)。 

 

 内訳は、書籍が前年比4.4%減の8492億円。雑誌は3.9%減の1兆864億円。雑誌の落込みは98年から連続12年のマイナス成長となった。

 書籍は、村上春樹さんの『1Q84(Book1.2)』(新潮社、2巻合計224万部)『読めそうで読めない漢字間違いやすい漢字』(二見書房、年間106万部累計114万部)とミリオンセラーが二点のみとなった。

 前年が『ハリーポッター』シリーズ最終巻や血液型本のブームなどでミリオンセラーが7点あったのに比べ話題作が出なかったといえる。
03年の『バカの壁』の大ヒット以来の低価格の教養新書・ケータイ小説・文庫などにややかげりが見えてきた。

  雑誌は、月刊誌が8445億円、3.2%減、週刊誌が2419億円、6.1%減と週刊誌の落ち込みが大きかった。広告減と合わせで考えると、よりいっそう厳しいといえる。

 中小書店の減少やCVSでの販売不振、インターネットなどの影響で、長期凋落が続いている。改めて「雑誌のあり方」が問われており、雑誌の再生が業界あげてのテーマとなっている。

 1960年代から1975年までは2桁成長、1976年から1996年までは1桁成長、98年からマイナス成長となっている。出版の推定売上が1兆円を突破したのが1976年、2兆円を突破したのが1989年のことである。

 1976年に、雑誌の売上げが書籍の売上げを追い越し「雑高書低」となり、雑誌が、出版産業の成長の推進力となった。80年代の10年間の成長率は40.4%、90年代の10年間の成長率は、わずかに5.1%で、2009年の推定売上は、1988年の水準まで、落ち込んだことになる。    (文責:出版メディアパル/下村昭夫)