《特別寄稿》『盛会だった南涯先生を追悼する集い』 舘野 晳

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《特別寄稿》

盛会だった南涯先生を追悼する集い

舘野 晳 

 安春植先生の出版研究の業績を記念する「南涯・安春植先生記念事業会」が発足したのは,先生が1993 年に逝去された直後のことだった.以来,事業会は南涯出版文化賞の選定・授与,国際出版学術発表会の開催,遺稿集の刊行などの事業を実施してきた.
 このたび(2010 年11 月26 日)事業会は,ソウル仁寺洞のギャラリーで「第4 回南涯出版文化賞授賞式」を開催したが,大勢の出版関係者・研究者が参加して盛会だった.この賞は永年出版研究や古書研究に携わってこられた方の功績を称え,後進の励ましとするのが目的であり,これまでの受賞者は,清水英夫(日本出版学会元会長,2001 年),箕輪成男(神奈川大学名誉教授,2003 年),劉杲(中国編輯学会前会長,2008 年)の各氏である.
 そして今回第4 回の受賞者は韓勝憲弁護士だった.韓勝憲弁護士と出版界・出版研究との関係については,いまさら説明する必要もないだろうが,著作権法研究の第一人者であり,出版・言論弾圧事件などの被告側代理人として法廷内外で闘ってこられた方である.その業績は,韓勝憲著『分断時代の法廷』(舘野あきら訳,岩波書店,2008 年)に,隈なく語られている.
 授賞式には2 人の日本人受賞者,そして日本出版学会にも招待状が送られてきたが,種々の事情で参加は叶わなかった.しかし川井会長は「出版研究の国際的学術交流の礎をつくられた,南涯先生のご功績はとても大きいものがあります.日本出版学を代表して南涯先生に深く感謝申し上げます」と祝辞を送った.
 ここで川井会長が「国際的学術交流の礎」と述べているのは,1984 年10 月13 日に,ソウルで開催された「国際出版学術発表会」を指している.当時,韓国出版学会会長だった安春植先生のお招きで,日本出版学会の会員が大挙ソウルを訪問し,学術発表・交流をしたのである.こうして日本出版学会の国際交流事業は本格化する契機が与えられた.
 一方,今回の授賞式を前後して会場のギャラリーでは,追慕展示「南涯安春植先生の生と古書の香り」が2 週間にわたって開催され,遺稿集『古書の香り』も刊行された.これは「古書―新たな発見」「古書―隠された秘密」の2 分冊からなり,本好き人間にはとてもうれしいエッセー集である.
 なお,南涯先生の著書のうち,唯一の日本語訳本は『図説 韓国の古書』(文ヨンジュ訳,日本エディタースクール出版部,2006 年)である,ご一読をお勧めしたい.