「真の学術交流」を目指して  川井良介

■「真の学術交流」を目指して

 川井良介

 

 これまで国際出版研究フォーラムを巡って,吉田公彦顧問は,「言葉の問題といってしまえばそれまで」だが,「……交流を続けるならば,その言葉の壁を破」らなければ,「……人間関係だけの交流に終わってしまう」,箕輪成男名誉会長も「……韓国や中国の論文や書籍にわれわれのものがどれだけ紹介引用されているか」(『出版学の現在』)と,それぞれ「真の学術交流」の必要性を唱えている。
 これらの指摘は,もっともである。このため,今回の発表「日本のベストセラー」では,日本やアメリカのモットーによるベストセラーの概念だけでなく,中国や韓国のそれを,王萍さんや蔡星慧さんの協力を得て,紹介検討した。この試みが先の学界の大先輩の唱導に,どれだけ応えられたかは,今後の評価に待つしかない。
 ところで,発表準備のなかで,中韓両国には,全国的なベストセラーのランキングリストが存在しないことを教示された。すなわち日本は,全国をカバーする取次によって,信頼できるベストセラーのランキングリストなどを得ることができる。しかし,中韓両国の場合,有力書店のランキングリストをもってベストセラーリストとしているという。