バイタリティのある学会をめざして  植田康夫 (会報118号 2006年5月)

■ バイタリティのある学会をめざして (会報118号 2006年5月)


 植田康夫

 2000年に第一期目の会長に就任した時,「出版ニュース」に寄稿した抱負の弁は,「在野と自立の学会をめざして」という題名だった。これは,日本マスコミュニケーション学会の理事が大学の教員によってほぼ占められていることへの対抗意識を反映したものであったかもしれない。あれから6年,日本出版学会は,さまざまな模索を行ってきたが,この命題の達成度は,理事や会員諸氏のご協力によって,かなりの水準に達したと自負している。
 そして,この数年,学会としての装いも整えられてきた。たとえば,春季研究発表会で研究発表の会場が二つも必要になったということもその一つであり,さらに研究発表に際しての予稿集の充実もめざましいものがある。
 かって,吉田公彦会長時代に,企画調査委員会の一員として,中陣隆夫会員と共に,冊子体のレジメ集を作り,マスコミュニケーション学会にあやかって,春季研究発表会を土曜,日曜の二日間開催にした頃のことを想い出す。あの時のレジメ集に比べると,現在の予稿集は格段の差があるが,春季研究会の二日間開催は,残念ながら続けることは出来なかった。マスコミュニケーション学会は,大学教員の会員が多く,地方で二日間開催される春の学会にも,大学による出張費が支給されるので,一定の参加者が確保されるが,出版学会には,そのような特権のある会員が少なかったからである。
 このような理由によって,春季研究発表会の二日間開催は不可能になったが,それでも,昨年は秋季研究発表会を,岡山在住の会員や関西部会の会員のご努力によって,岡山で開催した。従来は,東京以外での開催というと,大阪か京都だけであったが,もっと会場を西へという願いがかなったわけである。ところで,私が会長になってから,会員の共著によって,『白書出版産業』を文化通信社から刊行することが出来た。同社からは,以前にも,『出版の検証』という学会員による共著書を刊行してもらったことがあるが,これら二冊の共著については,印税を学会の方に入れさせていただいたので,学会の財政にも寄与した。『白書出版産業』は,新しいデータに基いて,改定版を何年かごとに刊行することになっているので,またご協力をお願いしたい。学会の出版物は,この他にも三十五年史の編集が進んでおり,これは来年の刊行になる。その前に,今年秋には東京経済大学との共催で,「第12回国際出版研究フォーラム」される。これによって,出版研究の国際化を推進したいと思う。

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