2010年度活動報告(2010年4月~2011年3月まで)

2010年度活動報告(2010年4月~2011年3月まで)

1.概況

 1969年3月に設立された日本出版学会は,創立から40周年の節目を越え,新たな時代への歩みを進め始めた。これまで設立の理念と志を尊重し,円滑な研究者の交流や情報交換を行い,研究成果の発表のために,学会誌や会報の発行,研究発表会や各種の部会活動,そして国際出版研究フォーラムへの参加を継続的に行ってきた。
 これらが可能となったのは,何よりも学会を構成する会員の方々の努力と,経済的な支援をはじめ様々な便宜をはかっていただいている賛助会員の方々のご協力の賜物であり,ここに改めて深甚なる感謝の意を表したい。
 2010年度における日本出版学会の活動は,それまでの研究や人的交流の蓄積に基づいて着実に進められ,出版研究に対する関心は一層高められた。
 学会創立35周年記念事業として「出版研究国際交流基金」という基金が設置されたことで,永続的な国際交流が可能となった。2010年度は中国南京市で開催された第14回国際出版研究フォーラムに多数の会員を派遣することができた。
 また,2010年4月24日に東京経済大学国分寺キャンパスで春季研究発表会を開催した。参加者は121名であり,8名の研究発表および「電子書籍産業の検証――コンテンツ流通,デバイス,知財ビジネス」と題した特別シンポジウムが行われた。
 また,秋季研究発表会は,2010年11月20日に大手前大学さくら夙川キャンパスで開催され,78名の参加者で,5名の研究発表と大西寿男氏による特別講演が行われた。


2.会員数

正会員       370名
賛助会員  法人  50社
        個人   1名
名誉会員        5名


3.総会

 2010年度総会は,2010年4月24日(土),東京都国分寺市の東京経済大学国分寺キャンパスにおいて147名(委任状を含む)の会員が出席,2009年度事業報告,同決算,2009年度特別会計決算,2010年度事業計画案,同予算案,2010年度特別会計予算案をそれぞれ審議・可決した。
 なお,第31回日本出版学会賞は,下記のとおりである。
【日本出版学会賞】
 浅岡邦雄『〈著者〉の出版史――権利と報酬をめぐる近代』(森話社)
【日本出版学会賞・奨励賞】
 柴野京子『書棚と平台――出版流通というメディア』(弘文堂)
 三宅興子・香曽我部秀幸編『大正期の絵本・絵雑誌の研究―― 一少年のコレクションを通して』(翰林書房)


4.理事会

 2010年度の会務を行うため,2010年度総会から本総会に至るまでの間,理事会を下記のとおり開催した。
 第1回: 2010年4月24日
 第2回: 2010年5月31日
 第3回: 2010年7月12日
 第4回: 2010年9月13日
 第5回: 2010年10月12日
 第6回: 2010年12月13日
 第7回: 2011年2月1日
 第8回: 2011年3月22日
 第9回: 2011年4月19日


5.調査研究委員会

 調査研究委員会は,主として各部会間の連絡調整にあたった。各部会の活動状況は次のとおりである。
(1)学術出版研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(2)雑誌研究部会
 2010年10月21日(東京電機大学)「質的調査法としての雑誌分析」橋本嘉代
 2010年11月30日(東京電機大学)「占領と女性雑誌」三鬼浩子(歴史部会 共催)
(3)出版技術研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(4)出版教育研究部会
 2010年5月14日(日本大学法学部)「「出版論」の講義について」諸橋泰樹
(5)出版経営研究部会
 2010年11月22日(東京電機大学)「出版産業変容の透視図――「紙の本」の未来と「デジタルな本」の未来」植村八潮(デジタル出版研究部会 共催)
(6)出版著作権研究部会
 2011年2月9日(日本大学法学部)「2011年出版産業の展望――電子出版の動向と出版者の権利・新しい出版契約」樋口清一(出版流通研究部会 共催)
(7)出版編集研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(8)出版法制研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(9)出版流通研究部会
 2010年4月26日(八木書店)「今,出版社の経営はどうなっているのか」柴崎和博
 2010年8月4日(八木書店)「出版流通はどう変わるのか――近刊情報センター構想」永井祥一
 2010年11月12日(八木書店)「出版流通の側面から見た出版の自由」長岡義幸
 2011年2月9日(日本大学法学部)「2011年出版産業の展望――電子出版の動向と出版者の権利・新しい出版契約」樋口清一(出版著作権研究部会 共催)
(10)デジタル出版研究部会
 2010年10月28日(東京電機大学)「中国の電子出版の現状」張志強
 2010年11月22日(東京電機大学)「出版産業変容の透視図――「紙の本」の未来と「デジタルな本」の未来」植村八潮(出版経営研究部会 共催)
(11)歴史部会
 2010年5月27日(日本エディタースクール)「明和年間の記憶術・忘却術の出版」甘露純規
 2010年11月30日(東京電機大学)「占領と女性雑誌」三鬼浩子(雑誌研究部会 共催)
(12)関西部会
 2010年6月14日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「『戦時統制とジャーナリズム――1940年代メディア史』について」吉田則昭
 2010年8月6日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「最近の図書館における電子化の動向――大学図書館の再定義とその編集機能」飯野勝則
 2010年9月1日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「日本の漫画を世界に――キンドル,iPadとコミック配信の現在」大橋大樹
 2011年1月27日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「公共図書館のおける電子書籍サービス――大日本印刷・CHIグループによる電子図書館の構築支援サービスの取り組み」永田薫


6.プログラム委員会

 総務委員会と調査研究委員会によって構成される合同委員会を開催し,研究発表会の企画・運営に当たった。
(1)春季研究発表会(2010年4月24日,東京経済大学国分寺キャンパス)
〈研究発表 第1分科会〉
1.「雑誌編集長のリーダーシップと業績に関する分析」姜 理惠
2.「情報バリアフリーをめざして――広がりつつあるSPコード(第3報)」深見拓史
3.「紙の本と電子書籍についてのWebによる意識調査」矢口博之
4.「アマゾン・アップルの電子出版で拡大する新しい“紙の書籍出版”の形を考える」主藤孝司
〈研究発表 第2分科会〉
5.「『実業之日本《支那問題号》』と商務印書館」稲岡 勝
6.「明治前期における“コピライト”概念の一考察――その「翻訳」という営みを通して」堀井健司
7.「ナチ時代のBertelsmann社」佐藤隆司
8.「森田草平『輪廻』をめぐる問題――検閲,伏字,ページ差し替え,差別問題」牧 義之
〈特別シンポジウム〉
「電子書籍産業の検証――コンテンツ流通,デバイス,知財ビジネス」
(2)秋季研究発表会(2010年11月20日,大手前大学さくら夙川キャンパス)
〈研究発表〉
1.「カール・バウアー:ある出版人の生き方」佐藤隆司
2.「白井喬二「新撰組」と『サンデー毎日』の関係性を再検証する」中村 健
3.「図書館資料としてのマンガの現状と課題」村木美紀
4.「国立国会図書館における電子納本制度と出版業界」湯浅俊彦
5.「博文館『少年少女譚海』の編集方針とその変遷」中川裕美
〈特別講演〉
「電子出版時代の「校正のこころ」」大西寿男


7.『出版研究』編集委員会

 『出版研究』編集委員会は,随時会合を開いて,学会誌『出版研究』の企画・編集にあたり,2010年3月20日に第40号(A5判,208頁,1000部,定価2,730円〔本体2,600円+税〕)を発行し,合わせて第41号の編集を行った。


8.広報委員会

 広報委員会は,学会活動に関する対外的広報活動を随時行うと共に,学会案内の作成,および『日本出版学会会報』の企画・編集に当たり,次の各号を発行した。
第128号=64頁,2010年9月20日
 (印刷部数700部)
第129号=40頁,2011年2月20日
 (印刷部数700部)
 また,学会のホームページを6月15日にリニューアルし,ホームページの目的として,・新入会希望者など出版学会の情報を求める人に向けた情報提供を行う,・出版学会が開催する行事等を告知する,・会員への学会情報の提供等を行う――とし,運営の基本方針として,出版学会としてオーソライズされた情報を発信することを確認。今後,この目的と方針に則り,広報委員会が適宜更新を行っていくこととした。


9.関西委員会

 関西委員会は,調査研究委員会と協力して,学会の秋季研究発表会の運営にあたった。


10.国際交流委員会

 国際交流委員会は,第14回国際出版研究フォーラムの発表者,参加者の募集および主催者側である中国編輯学会との連絡・調整にあたった。
 2012年度に日本での開催が決定した第15回国際出版研究フォーラムの準備を開始した。


11.出版企画委員会

 出版企画委員会は,『白書出版産業2010』(文化通信社)を刊行した。


12.日本出版学会賞審査委員会

 日本出版学会賞審査委員会は,第31回日本出版学会賞の審査にあたり,検討を行った。


13.役員(2012年度総会まで)

会長=川井良介
副会長=植村八潮 芝田正夫 諸橋泰樹
理事=浅岡邦雄 茨木正治 遠藤千舟 大和博幸 掛野剛史 菊池明郎 木下修 清田義昭 古山悟由 佐竹久仁子 志村耕一 下村昭夫 田中公子 蔡星慧 塚本晴二朗 中村幹 中村健 長谷川一 羽生紀子 樋口清一 明星聖子 山田健太 湯浅俊彦 吉川登 吉田則昭
監事=竹内和芳 八木壮一
事務局長=星野渉


14.常設委員会

(◎=委員長・部会長,○=副部会長)
(1)総務委員会=◎植村八潮 芝田正夫 川井良介 中村幹 星野渉 諸橋泰樹
(2)調査研究委員会=◎植村八潮 川井良介 芝田正夫 星野渉 諸橋泰樹
学術出版研究部会=◎橋元博樹 ○植村八潮
雑誌研究部会=◎吉田則昭 ○大澤聡 ○橋本嘉代
出版技術研究部会=◎中村幹
出版教育研究部会=◎塚本晴二朗
出版経営研究部会=◎木下修 ○永井祥一 ○中町英樹 ○中村文孝 星野渉
出版著作権研究部会=◎樋口清一
出版編集研究部会=◎植田康夫 ○蔡星慧
出版法制研究部会=◎阿部圭介 ○塚本晴二朗
出版流通研究部会=◎下村昭夫 清田義昭 中町英樹
デジタル出版研究部会=◎植村八潮 ○中村幹
歴史部会=◎浅岡邦雄 田中公子
関西部会=◎湯浅俊彦 佐竹久仁子 中村健 羽生紀子 吉川登
(3)『出版研究』編集委員会=◎諸橋泰樹 中村幹 石沢岳彦 茨木正治 稲田隆 上田宙 大和博幸 掛野剛史 玉川博章
長谷川一 吉田則昭
(4)広報委員会=◎志村耕一 石沢岳彦 稲田隆 古山悟由 下村昭夫 田中公子 橋元博樹
(5)関西委員会=◎吉川登 佐竹久仁子 中村健 羽生紀子 湯浅俊彦
(6)国際交流委員会=◎山田健太 遠藤千舟 竹内和芳 蔡星慧 塚本晴二朗 羽生紀子 樋口清一 藤本信彦 文ヨン珠 山本俊明 吉田公彦 王萍
(7)日本出版学会賞審査委員会=◎川井良介 茨木正治 大和博幸 掛野剛史 蔡星慧 田中薫 星野渉
(8)出版企画委員会=◎木下修 星野渉