2008年度活動報告(2008年4月~2009年3月まで)

2008年度活動報告(2008年4月~2009年3月まで)

■ 1.概 況

 2008年度における日本出版学会の活動は,それまでの研究や人的交流の蓄積に基づいて着実に進められ,出版研究に対する関心は一層高められた。なお,当期の事業は,前期に行われた役員改選によって新たに選出された新役員によって行われてきた。
 学会創立35周年記念事業は,日本出版学会35年史『出版学の現在―日本出版学会1969-2006年の軌跡』(⑭朝陽会,2008年4月25日)の刊行をもってすべて完成した。
 継続されるのは,「出版研究国際交流基金」への任意の寄付の受け入れ,および,通常会計から日本出版学会賞への資金組み入れ等である。永続的な国際交流を可能とする「出版研究国際交流基金」が設置されたことで,今年度,韓国で開催された第13回国際出版研究フォーラムに対し総勢18名の代表団を派遣することができた。
 特別委員会として設置された「創立35周年記念事業委員会」「国際シンポジウム実行委員会」「日本出版学会35年史刊行委員会」および,既にその任務を終了した「財政に関する特別委員会」,「調査委員会」等の5つの委員会は前総会をもって解散された。
 このような状況の中において,2008年4月26日に日本大学法学部三崎町校舎で開催された春季研究発表会においては,189名の参加があり,10名の研究発表および特別講演会が行われた。また,初の名古屋地区開催となった秋季研究発表会は,中京大学名古屋キャンパスで開催され34名の参加者となった。
 「会員名簿」を新たに発行し,会員間の情報交流の一助とすることができた。
 1969年3月に設立された日本出版学会は,これまでその設立の理念と志を尊重し,円滑な研究者の交流や情報交換を行い,研究成果の発表のために,学会誌や会報の発行,研究発表会や各種の部会活動,そして国際出版研究フォーラムへの参加を継続的に行ってきた。これらが可能となったのは,何よりも学会を構成する会員の方々の努力と,経済的な支援をはじめ様々な便宜をはかっていただいている賛助会員の方々のご協力の賜物であり,ここに改めて深甚なる感謝の意を表したい。

■ 2.会員数

正会員       362名
賛助会員   法人   54社
       個人   5名

■ 3.総 会

 2008年度総会は,2008年4月26日(土),東京都千代田区の日本大学法学部三崎町校舎において168名(委任状を含む)の会員が出席,2007年度事業報告,同決算,同学会創立35周年記念事業決算,2008年度事業計画案,同予算案,同学会創立35周年記念事業予算案をそれぞれ審議・可決した。
 なお,第29回日本出版学会賞については,下記のとおりである。
(1)日本出版学会賞
 和田敦彦『書物の日米関係――リテラシー史に向けて』(新曜社)
(2)日本出版学会賞・特別賞
 小尾俊人『出版と社会』(幻戯書房)
(3)日本出版学会賞・特別賞
 株式会社印刷学会出版部編『「印刷雑誌」とその時代―実況・印刷の近現代史』
 (株式会社印刷学会出版部)
(4)日本出版学会賞・特別賞
 『50年史』編集委員会編『日本雑誌協会 日本書籍出版協会 50年史』
 (社団法人日本雑誌協会・社団法人日本書籍出版協会)

■ 4.理事会

 2008年度の会務を行うため,2008年度総会から本総会に至るまでの間,理事会を下記のとおり開催した。
 第1回: 2008年 4 月26日
 第2回: 2008年 5 月26日
 第3回: 2008年 7 月 7 日
 第4回: 2008年 9 月10日
 第5回: 2008年10月 6 日
 第6回: 2008年12月16日
 第7回: 2009年 2 月16日
 第8回: 2009年 3 月23日
 第9回: 2009年 4 月13日

■ 5.調査研究委員会

 調査研究委員会は,主として各部会間の連絡調整にあたった。各部会の活動状況は次のとおりである。
(1)学術出版研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(2)雑誌研究部会
 2008年10月28日(日本エディタースクール)「占領期雑誌と大衆文化」谷川建司
 2009年1月27日(東京電機大学)「デジタル雑誌の現状分析と課題」梶原治樹
 2009年3月12日(八木書店)「雑誌よ,甦れ―再生の途を求めて」高橋文夫
(3)出版技術研究部会
 2008年10月14日(東京電機大学)「電子ペーパーの動向と利用技術の現在」鈴木明
(4)出版教育研究部会
 2008年12月12日(日本大学法学部)「私の『出版論』講義」川井良介
 2009年2月27日(日本大学法学部)「出版メディア論―理論と教育の観点から」蔡星慧
(5)出版経営研究部会
 2008年4月14日(日本エディタースクール)「出版統計,実態調査にみる日本の書店動向―SWOT分析から書店の特質・問題点を指摘する」木下修
 2008年5月28日(日本エディタースクール)「「倒産」から診た日本経済の変容―出版業・書店業の場合」塚本徹
 2008年6月23日(日本エディタースクール)「韓国書店組合連合会の書店人学校―組合活動の事例として」星野渉
 2008年7月9日(日本エディタースクール)「書籍取次店の成立条件―鈴木書店の経営実態から」小泉孝一
 2008年7月29日(日本エディタースクール)「「書籍・雑誌の流通・取引慣行の現状」(公取委調査・作成)の射程と著作物再販の地平」石岡克俊,星野渉,木下修
 2009年2月25日(東京電機大学)「ケータイ小説ブーム分析に見る出版構造の変化―郊外化と若者の地元志向」速水健朗
(6)出版著作権研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(7)出版編集研究部会
 2008年7月24日(日本エディタースクール)「変わりゆく出版界の中での編集」中嶋廣
(8)出版法制研究部会
 今後の研究課題,部会運営について検討を行った。
(9)出版流通研究部会
 2008年4月15日(八木書店本店)「書店の再生は雑誌から―雑誌が売れないわけを販売現場から探る」名女川勝彦
 2008年7月31日(八木書店)「書籍・雑誌の取引慣行の現状―「RFタグ導入=同一銘柄・複数取引条件の併用の試み」」大竹靖夫
 2008年11月7日(八木書店)「人口動態の出版流通への影響―「人口の減少・人口増加率の鈍化と読者人口の推移」」山本隆樹
 2009年3月12日(八木書店)「雑誌よ,甦れ―再生の途を求めて」高橋文夫
(10)デジタル出版研究部会
 2009年1月27日(東京電機大学)「デジタル雑誌の現状分析と課題」梶原治樹
 2009年2月25日(東京電機大学)「ケータイ小説ブーム分析に見る出版構造の変化―郊外化と若者の地元志向」速水健朗
(11)歴史部会
 2008年5月30日(日本エディタースクール)「雑誌『経済往来』『日本評論』の編集者たち―紙面変容との連関を視軸に」大澤聡
 2008年10月3日(日本エディタースクール)「明治期書店史料へのアプローチ―松本市高美書店のケース」和田敦彦
 2009年2月27日(日本エディタースクール)「昭和前期農村における活字メディアの展開と受容―産業組合の出版活動を中心に」河内聡子
(12)関西部会
 2008年7月30日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「書籍出版流通の再考―制度的メカニズムと課題」蔡星慧
 2008年8月29日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「出版文化とライフヒストリー」阪本博志
 2008年9月19日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「出版の近未来―産業分析グラフで考える出版産業の現状と課題」下村昭夫
 2008年10月23日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「音声訳の視点から考える視覚障害者サービスと出版メディア」近藤友子
 2009年3月2日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「読書端末はなぜ普及しないのか?」筑瀬重喜
 2009年3月25日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「ヤングアダルト系出版物の現在」村木美紀
(13)特別セミナー
 2008年7月10日(日本エディタースクール)「韓国「読書文化振興基本計画」と日韓の出版政策」白源根

■ 6.プログラム委員会

 総務委員会と調査研究委員会によって構成される合同委員会を開催し,研究発表会の企画・運営に当たった。
(1)春季研究発表会(2008年4月26日,日本大学法学部三崎町校舎)
〈研究発表 第1分会〉
1.「出版流通を取り巻く理論と現実,その一般化へ向けて」会田政美
2.「キリスト教用語の変遷からみたわが国文化の一側面」佐藤隆司
3.「東アジア的ディスクールとしての「活版印刷史」―比較メディア史的観点から」湯川史郎
4.「史料から見た『物類品隲』出版経緯に関する一考察」松田泰代
5.「近代日本の絵本と住吉大社御文庫蔵書―第1回調査報告」大橋眞由美
〈研究発表 第2分会〉
6.「出版振興政策と著作権法改正論議にみる出版社の役割」植村八潮
7.「日本出版産業の構造変化―雑誌メディアの低迷とデジタル技術の影響」星野渉
8.「マーケティングに基づく出版社経営の再生」中町英樹
9.「学術情報のグローバルな流通の現状と課題―電子メディアは学術出版システムの危機を解決するのか」山本俊明
10.「日本における出版メディアのデジタル化の現状と読書の変容」湯浅俊彦
〈特別シンポジウム〉
「デジタル時代の図書館と出版」
基調講演「ディジタル図書館サービスと出版界」長尾真,パネルディスカッション「デジタル時代の図書館と出版―新たな枠組みと課題」菊池明郎・小澤正和・小池信彦・長尾 真・橋元博樹(司会・植村八潮)
(2)秋季研究発表会(2008年11月29日,中京大学名古屋キャンパス)
〈研究発表〉
1.「大衆文学の転換―大佛次郎『ごろつき船』を中心に昭和3,4年の夕刊小説」中村健
2.「文庫本ブームとしてのライトノベルブーム―角川系レーベルの刊行点数を視座にして」高島健一郎
3.「『論壇時評』の史的考察」大澤聡
4.「二つの『白髪鬼』―涙香と乱歩の翻案をめぐって」堀啓子
〈特別講演〉
「近世の出版と読者」長友千代治

■ 7.『出版研究』編集委員会

 『出版研究』編集委員会は,随時会合を開いて,学会誌『出版研究』の企画・編集にあたり,2008年3月20日に第38号(A5判,154頁,1000部,定価2,730円〔本体2,600円+税〕を発行し,合わせて第39号の編集を行った。

■ 8.広報委員会

 広報委員会は,学会活動に関する対外的広報活動を随時行うと共に,学会案内の作成,および『日本出版学会会報』の企画・編集に当たり,次の各号を発行した。
  第121号=20頁,2008年4月25日(印刷部数700部)
  第122号=64頁,2008年10月10日(印刷部数700部)
  第123号=32頁,2009年1月31日(印刷部数700部)

■ 9.関西委員会

 関西委員会は,調査研究委員会と協力して,学会の秋季研究発表会の運営にあたった。

■ 10.国際交流委員会

 国際交流委員会は,第13回国際出版研究フォーラム(国際出版学術会議)の発表者,参加者の募集,主催者側である韓国出版学会との連絡・調整にあたった。
 フォーラムは5 月13 日,ソウル市内の「韓国文化の家」で開かれ,第3 回安春根出版著述賞授賞式の後,産業,政策,経営,読書の4 セッションに分けて発表が行われた。日本からは以下の発表が行われた。
星野渉「日本の出版産業の構造的変化=雑誌メディアの低迷とデジタル技術の影響」
植村八潮「出版振興政策と著作権法改正論議にみる出版社の役割」
山本俊明「学術情報のグローバルな流通の現状と課題=電子メディアは学術出版システムの危機を解決するのか」
中町英樹「マーケティングに基づく出版社経営の再生」
湯浅俊彦「日本における出版メディアのデジタル化の現状と読書の変容」

■ 11.出版企画委員会

 出版企画委員会は,日本出版学会史刊行委員会に参加し,編纂と刊行に携わった。
 『白書出版産業』の改訂版作業を開始した。2009年9月をめどに刊行予定である。

■ 12.日本出版学会賞審査委員会

 日本出版学会賞審査委員会は,第29回日本出版学会賞の審査にあたり,検討を行った。

■ 13.役員(2009年度総会まで)

会長=川井良介
副会長=芝田正夫 諸橋泰樹 植村八潮
理事=浅岡邦雄 伊藤洋子 茨木正治 江代修 遠藤千舟 大和博幸 金山勉 木下修 清田義昭 古山悟由 芝田正夫 志村耕一 下村昭夫 田中公子 塚本晴二朗 蔡星慧 中野潔 中町英樹 中村幹 長谷川一 樋口清一 山田健太 山本俊明 湯浅俊彦 吉川登 吉田則昭
監事=竹内和芳 八木壮一
事務局長=星野渉
名誉会長=箕輪成男
顧問=清水英夫 吉田公彦 林伸郎

■ 14.常設委員会

(◎=委員長・部会長,○=副部会長)
(1)総務委員会=◎遠藤千舟 芝田正夫 植村八潮 川井良介 中村幹 星野渉 諸橋泰樹
(2)調査研究委員会=◎植村八潮 遠藤千舟 川井良介 芝田正夫 星野渉
  学術出版研究部会=◎山本俊明
  雑誌研究部会=◎吉田則昭
  出版技術研究部会=◎中村幹
  出版教育研究部会=◎塚本晴二朗
  出版経営研究部会=◎木下修 ○永井祥一 ○中村文孝 星野渉
  出版著作権研究部会=◎樋口清一
  出版編集研究部会=◎植田康夫 ○蔡星慧
  出版法制研究部会=◎阿部圭介 ○塚本晴二朗
  出版流通研究部会=◎下村昭夫 清田義昭 長谷川一 中町英樹
  デジタル出版研究部会=◎植村八潮 ○中村幹
  歴史部会=◎浅岡邦雄 田中公子
  関西部会=◎湯浅俊彦 江代修 中野潔 吉川登
(3)『出版研究』編集委員会=◎諸橋泰樹 中村幹 石沢岳彦 茨木正治 伊藤洋子 稲田隆 上田宙 大和博幸 掛野剛史 吉田則昭
(4)広報委員会=◎下村昭夫 石沢岳彦 稲田隆 岡部友春 古山悟由 志村耕一 中野潔 橋元博樹 長谷川一
(5)関西委員会=◎吉川登 石田あゆう 江代修 中野潔 羽生紀子 福島聡 湯浅俊彦
(6)国際交流委員会=◎山田健太 遠藤千舟 竹内和芳 蔡星慧 羽生紀子 藤本信彦 文ヨン珠 山本俊明 吉田公彦 王萍
(7)日本出版学会賞審査委員会=◎川井良介 植村八潮 芝田正夫 塚本晴二朗 長谷川一 三浦勲 明星聖子
(8)出版企画委員会=◎木下修 星野渉

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