2006年度活動報告(2006年4月~2007年3月まで)

2006年度活動報告(2006年4月~2007年3月まで)

■ 1.概 況

 2006年度における日本出版学会の活動においては,多数の人々の参加により,出版研究に対する強い関心を集め,かつ多くの研究成果が発表された一年であった。
 世界の政治・経済情勢が必ずしも安定せず,わが国の出版関連業界においても時代の変革の波が押し寄せている中で,出版に関する研究はたゆまずに継続され,2006年5月14日に城西大学紀尾井町キャンパスで開催された春季研究発表会においては,148名の参加があり,10件の研究発表,および特別シンポジウムが行われた。
 また,創立35周年を記念して開催された国際シンポジウムにおいては,海外からの発表者・参加者も迎え,2006年10月28日~29日の2日間にわたって,のべ214名の参加があり,基調講演も含めて24件の発表が行われた。とりわけ,東京経済大学との共催により,人材,施設利用,資金,その他の面において多くの成果を収めることができた。
 さらに,国際シンポジウムの前夜祭を兼ねて開催された創立35周年記念祝賀会には81名が出席し,日本書籍出版協会や,日本マスコミュニケーション学会の代表からも挨拶が行われた。また,今回の国際シンポジウムの後援団体としては,日本書籍出版協会,日本雑誌協会,日本書店商業組合連合会をはじめ多数の関連団体の協力を得ることができた。
 2004年度総会において基本方針が決定された創立35周年記念事業においては,記念事業実行委員会を設置して取り組みを行い,募金活動においては,個人の寄付が目標を上回るなど,事業の進行に必要な原資を確保することができた。
 また,学会史の刊行については,刊行委員会を組織して編集を進め,2007年中の刊行をめざして鋭意準備が進められている。
 創立10周年を記念して設置された日本出版学会賞は,2006年度で27回を迎え,今後も継続することによって,出版研究の推進に大いに寄与することになろう。
 2005年度において,学会財政の慢性的,構造的な赤字体質の解消をめざし,かつ,学会の業務の完全な電子化,ネットワーク化を実現するために行われた学会事務局の合理化は2006年度においてその真価を発揮し,財政の健全化に貢献するだけでなく,学会の活動やその他の情報の迅速な共有に著しく力を発揮することとなった。とりわけ,2006年秋に開催された国際シンポジウムは,事務局の電子化,ネットワーク化なしには実現しなかったといっても過言ではない。
 当学会はさらに,従来の会報委員会とウェブサイト委員会を統合し,新たに広報委員会として誕生させることができた。これによって,従来の会報の編集・発行やウェブサイトの運営のみならず,各メディアに対して積極的に働きかけることができるようになったのである。例えば,国際シンポジウムに関する全国紙における報道は,このような活動の成果であるともいうことができる。
 出版研究に対する研究者の関心は,以前にも増して広がりを見せ,今後は,研究者のネットワークの国際的拡大こそが,国際シンポジウムを経た当学会の今後の課題とも考えられよう。

■ 2.会員数

 正会員       367名
 賛助会員   法人   57社
        個人   7名

■ 3.総 会

 2006年度総会は,2006年5月14日(日),東京都千代田区の城西大学紀尾井町キャンパスにおいて164名(委任状を含む)の会員が出席,2005年度事業報告,同決算,同学会創立35周年記念事業決算,2006年度事業計画案,同予算案,同学会創立35周年記念事業予算案をそれぞれ審議・可決した。
 なお,第27回日本出版学会賞については,該当作がなかった。

■ 4.理事会

 2006年度の会務を行うため,2006年度総会から本総会に至るまでの間,理事会を下記のとおり開催した。
  第 1 回: 2006年 5 月14日
  第 2 回: 2006年 6 月 5 日
  第 3 回: 2006年 7 月18日
  第 4 回: 2006年 9 月 4 日
  第 5 回: 2006年10月16日
  第 6 回: 2006年12月 8 日
  第 7 回: 2007年 2 月 5 日
  第 8 回: 2007年 3 月27日
  第 9 回: 2007年 4 月17日
  第10回: 2007年 5 月19日

■ 5.調査研究委員会

 調査研究委員会は,主として各部会間の連絡調整にあたった。各部会の活動状況は次のとおりである。
(1)歴史部会
 2006年4月21日(日本エディタースクール)「長尾景弼と博聞社――創業期を中心に」稲岡勝
 2006年12月15日(日本エディタースクール)「販売情報誌にみる赤本・特価本の流通」戸家誠
 2007年2月9日(日本エディタースクール)「江戸初期の出版業界の動向」柏崎順子
 2007年3月6日(日本エディタースクール)「三宅米吉と雑誌『文』」竹田進吾
(2)出版法制研究部会
 2006年12月1日(日本大学法学部会議室)「生徒の自殺と報道の倫理――教育現場の視点から」佐藤康史
(3)出版流通研究部会
 2006年5月22日(八木書店会議室)「韓国の出版事情」舘野
 2006年11月28日(八木書店会議室)「書籍販売代行業の現場レポート『書店と人と本の販売』」西川恵美子
(4)出版技術研究部会
 今後の部会運営のあり方について検討を行った。
(5)雑誌研究部会
 2006年7月25日(日本エディタースクール)「週刊誌の編集」堀田貢得(出版編集研究部会・雑誌研究部会 合同研究会)
(6)出版教育研究部会
 今後の部会運営のあり方に関する検討を行った。
(7)学術出版研究部会
 2006年12月7日(東京電機大学)「知のゲートキーパーとしての学術出版社と編集者」佐藤郁哉
 2006年12月12日(東京電機大学)「クリエイティブ・コモンズが示す著作権制度の新しい運用方式」上村圭介
(8)デジタル出版研究部会
 今後の研究課題,および部会運営について検討を行った。
(9)出版経営研究部会
 2006年9月14日(文京区民センター)「日書連『全国小売書店経営実態調査報告書』からみた日本の書店の現状と課題」報告者・高須博久,パネリスト:大竹靖夫・木下修・永井祥一・星野渉,司会:中村文孝
(10)出版著作権研究部会
 2006年5月12日(日本出版会館)「著作権の権利制限について――法成立の経緯と意味」前田哲男
(11)出版編集研究部会
 2006年7月25日(日本エディタースクール)「週刊誌の編集」堀田貢得(出版編集研究部会・雑誌研究部会 合同研究会)
 2007年3月7日(日本エディタースクール)「『中央公論』と『婦人公論』の編集を体験して」水口義朗
(12)関西部会
 2006年4月26日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「子どもの本のいま――保育の現場から」江草元治
 2006年7月28日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「『女学生の友』にみる男女交際観――純潔教育と性解放のはざまで」藤本純子
 2006年8月28日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「電子出版からウェブ・パブリッシングへ:グーグル,アマゾン・コム,機関リポジトリ」合庭惇
 2006年9月21日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「韓国の出版事情」舘野
 2006年11月16日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「ミッチー・ブームと女性週刊誌」石田あゆう
 2007年1月24日(関西学院大学大阪梅田キャンパス)「明治期の子ども雑誌にみる〈中国〉表象――博文館『日本之少年』と『少年世界』を事例として」泉陽一郎

■ 6.プログラム委員会

 総務委員会と調査研究委員会によって構成される合同委員会を開催し,研究発表会の企画・運営に当たった。
(1)春季研究発表会(2006年5月14日,東京都千代田区城西大学紀尾井町キャンパス)
〈研究発表 第1分会〉
 1.「出版再販に関する制度論的分析」遠藤貴宏
 2.「情報バリアフリーをめざして――広がりつつあるSPコード」深見拓史
 3.「教育利用からみた電子テキストメディアの研究」植村八潮
 4.「装丁デザインの定量的評価に関する研究」矢口博之
 5.「出版学におけるリサーチ・メソッドの検証」遠藤千舟
〈研究発表 第2分会〉
 6.「アメリカの出版・書店事情を考察する」下村昭夫
 7.「旺文社文庫からみた出版文化史,旺文社文庫年代記」田坂憲二
 8.「大学の成立と書物・出版」中陣隆夫
 9.「ドイツ印刷出版書籍業関係年表について」佐藤隆司
 10.「明治期奥付考」浅岡邦雄
〈特別シンポジウム〉
「本格化する出版メディアの電子化と出版者の役割 迫りくる変化:ケータイ,コミック配信,巨大ネットメディア」岩本敏・平井彰司・吉井順一・植村八潮(司会・星野渉)
(2)国際シンポジウム(2006年10月28日~29日,東京都国分寺市東京経済大学)
 別途学会に特別委員会として設置された国際シンポジウム実行委員会と,東京経済大学内に設置された実行委員会の協力のもとに,大学と学会の共催として開催された。

■ 7.『出版研究』編集委員会

 『出版研究』編集委員会は,随時会合を開いて,学会誌『出版研究』の企画・編集にあたり,2006年3月20日に第36号(A5判,180頁,1000部,定価2,730円〔本体2,600円+税〕)を発行し,合わせて第37号の編集を行った。

■ 8.広報委員会

 今年度は,従来の会報委員会とウェブサイト委員会を統合し,新たに広報委員会を設置,国際シンポジウムの開催等にも協力し,一定の成果をあげることができた。また,『日本出版学会会報』の企画・編集に当たり,次の各号を発行した。
  第118号=48頁,2006年8月31日 (印刷部数700部)
  第119号=32頁,2007年3月31日 (印刷部数700部)

■ 9.関西委員会

 関西委員会は,通常,学会の秋季研究発表会開催の立案と運営にあたり,日本出版学会秋季研究発表会を開催するが,本年は国際シンポジウム開催のため関西地区においては開催せず,同シンポジウムに協力し,国際シンポジウムに参加した。

■ 10.国際交流委員会

 国際交流委員会は,本年は国際シンポジウム実行委員会に参加し,国際シンポジウムの企画と,海外との連絡調整,実行に当たった。

■ 11.出版企画委員会

 出版企画委員会は,今年度においては,日本出版学会史刊行委員会に参加し,その編纂と刊行の準備を行った。

■ 12.日本出版学会賞の審査・授与

 日本出版学会賞審査委員会は,第27回日本出版学会賞の審査にあたり,検討を行なったが,今回は受賞作なしとの結論に達した。

■ 13.役員(2008年度総会まで)

 会長=植田康夫
 副会長=遠藤千舟
 理事=浅岡邦雄 伊藤洋子 江代修 大和博幸 金山勉 川井良介 木下修
    清田義昭 古山悟由 芝田正夫 志村耕一 下村昭夫 塚本晴二朗 中野潔
    中村幹 長谷川一 樋口清一 星野渉 三浦勲 道吉剛 諸橋泰樹 山田健太
    山本武利 山本俊明 湯浅俊彦 吉川登 吉田則昭
 監事=竹内和芳 田中薫
 事務局長=植村八潮
 名誉会長=清水英夫
 顧問=信木三郎 箕輪成男 吉田公彦 林伸郎

■ 14.常設委員会

(◎=委員長・部会長,○=副部会長)
1.総務委員会=◎遠藤千舟 植田康夫 植村八潮 川井良介 中村幹 星野渉
2.調査研究委員会=◎植田康夫 植村八潮 遠藤千舟 川井良介 星野渉
  歴史部会=◎浅岡邦雄
  出版流通研究部会=◎下村昭夫 長谷川一 清田義昭 中町英樹
  出版法制研究部会=◎塚本晴二朗
  出版教育研究部会=◎諸橋泰樹
  出版技術研究部会=◎道吉剛 ○小出鐸男
  雑誌研究部会=◎川井良介 ○吉田則昭
  学術出版研究部会=◎山本俊明 ○長谷川一
  デジタル出版研究部会=◎植村八潮 ○中村幹
  出版経営研究部会=◎木下修 ○永井祥一 ○中村文孝 星野渉
  出版著作権問題研究部会=◎三浦勲 ○樋口清一
  出版編集研究部会=◎植田康夫 ○蔡星慧関西部会=◎吉川登 江代修 芝田正夫 中野潔
    湯浅俊彦
3.『出版研究』編集委員会=◎川井良介 石沢岳彦 伊藤洋子 稲田隆 稲田恵美子 上田宙
    大和博幸 掛野剛史 中村幹 道吉剛 吉田則昭
4.広報委員会=◎星野渉 石沢岳彦 稲田隆 古山悟由 志村耕一 下村昭夫 中野潔 長谷川一
5.関西委員会=◎芝田正夫 江代修 中野潔 湯浅俊彦 吉川登
6.国際交流委員会=◎山本俊明 遠藤千舟 竹内和芳 蔡星慧 津田和壽澄 羽生紀子 藤本信彦
    文ヨン珠 吉田公彦 王萍
7.日本出版学会賞審査委員会=◎植田康夫 稲岡勝 遠藤千舟 川井良介 塚本晴二朗 長谷川一
    明星聖子
8.出版企画委員会=◎星野渉 植田康夫 木下修

■ 15.特別委員会

1.財政に関する特別委員会=◎中村幹 植田康夫 植村八潮 遠藤千舟 川井良介 星野渉
2.創立35周年記念事業委員会=◎遠藤千舟 有山輝雄 今井悠紀 植田康夫 植村八潮 川井良介
    清田義昭 小出鐸男 芝田正夫 清水英夫 杉田信夫 高島国男 田辺聡 中村幹 信木三郎
    野間佐和子 林三郎 丸田耕三 三浦勲 箕輪成男 道吉剛 山口昭男 吉田公彦
3.日本出版学会35年史刊行委員会=◎星野渉 浅岡邦雄 植田康夫 植村八潮 遠藤千舟 川井良介
    川口正 木下修 清田義昭 古山悟由 下村昭夫 竹内和芳 中村幹 丸田耕三 道吉剛
4.国際シンポジウム(第12回国際出版研究フォーラム)実行委員会=◎遠藤千舟 植田康夫 植村八潮
    金山勉 清田義昭 川井良介 芝田正夫 竹内和芳 蔡星慧 津田和壽澄 中村幹 羽生紀子
    藤本信彦 白源根 星野渉 丸田耕三 道吉剛 文ヨン珠 山本俊明 吉田公彦 王萍
5.調査委員会=◎植田康夫 遠藤千舟 植村八潮 川井良介 芝田正夫 竹内和芳 三浦勲 山田健太

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