日本出版学会へようこそ

私たち日本出版学会では,出版およびそれに関連する事項の調査,研究を行い,出版文化の向上に資することを目的として活動しています。

研究発表会(春季:東京/秋季:関西)をはじめ,各部会を随時開催しています。

<日本学術会議 協力学術研究団体> 

新着情報

《第1セッション》 産業・流通の視点からみた出版


中国における電子書籍産業の現状分析
張志強,李鏡鏡
(南京大学情報管理学院出版科学学科教授/南京大学出版科学研究所)

 現状では電子書籍市場に関する統計が2種存在している。これは規格が一致していないためであるが,双方とも2010年度を基準にすると,倍あるいは倍以上の増加を記録している。2010年よりモバイル端末の普及とともに爆発的に発展し,その傾向は5種類に分類される。

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 国際出版研究フォーラム「総括討議」

座長(山田国際交流委員会委員長)  

 国際出版フォーラム総括討議をはじめるにあたって、各セクションで話された共通の理念というべき4つのキーワードを提起したいと思います。

 第一は、「出版概念の変容」ということでした。出版の再定義といってもよいと思われます。出版事業モデルの拡張、著作権の法制上の問題あるいは出版教育を含め、改めて「出版とは何か」と問題に立ち返る重要性が、多くの報告者の方が話されました。「読むメディア」から「見るまたは聞くメディア」への変容、その中で著者あるいはメッセージ内容についても変容が見られるということが話されました。
 韓国の報告者からは、「出版は源泉コンテンツである」という報告があり、中国の報告者からは「出版は見せる行為でもある」という観点から、「ゲームも含め幅広い出版を考えるべきである」との問題提起がありました。
 興味深い報告の中には、「本や新聞を読まなかった層」の中にも、デジタル化によって、新たな市場の広がりが見られると報告がありました。

 二つ目には、「読者または読書の変容」ということが話されました。伝統的な出版メディアの影響力の衰退ということが各国から報告されました。
 韓国からは、「文字中心から視聴覚中心へ」「深化型から拡張型へ」「1方向型から双方向型へ」が進み、「感覚的読書からハイパー的読書への変容」が話されました。中国からは、「デジタル出版の瞬時性、随意性、断片性から深い読みから浅い読みになってゆく傾向」があるとの指摘がありました。

 三つ目には、「ビジネスモデルの変容」ということが指摘されました。多くの方から「マルチメディア・コンテンツ産業への変容」ということが語られ、「本の居場所が狭くなる」という危機意識も共通していたといえます。
 「イノベーションは破壊である。しかし、壊してはいけないものがある。著作権もそのひとつである」ということが語られたことも共通認識のひとつだったと思います。韓国からは、スーパーコンテンツということが語られましたが、出版は古典コンテンツである。その「古典コンテンツを大事にしていこう」という指摘がありました。「選択と集中」ということも語られました。グローバルな国際市場を獲得していくには、まずは「国内の出版産業の基盤つくりを強化し、国際競争力を高めていこう」ということも語られました。「知識や能力の再構築をどのように果たしていくのか」という指摘もありました。
 中国からは、ゲームも含めた出版産業の拡大が語られ、ゲーム産業の飛躍的な発展や電子書籍の割合を25%まで高めるという国家計画も話されました。ネットユーザーが5億人を超えたという興味深い報告もありました。

 4つ目が「出版教育の変容」であります。新しい時代に対応するための「出版人の育成」が必要である。そのためには、大学教育が変わらねばならない」という指摘がありました。中国における体系的な大学教育に加え、デジタル教育にも取り込んでいる状況は興味深いものがありました。
 一方、韓国でもデジタル出版教育を積極的に取り入れている先進的な現状が報告され、目を見張る思いがありました。
 同時に「出版のあるべき姿」をどう伝えていくのか。「人材教育が遅れている産業には、成長が期待できない」という指摘には胸を打たれる思いでした。そして、現在に続いている「負の循環」にどのように立ち向かっていくのかは、日本にも共通するものがあります。

それでは、各国の先生方から、総括的なお話をいただきたいと思います。

 

川井良介先生(日本出版学会会長)

 この「国際出版フォーム」は、1984年に始まりました。私が初めて報告者になったのは、2004年の「武漢フォーラム」が最初でありました。
 印象的にいえば、いままでの「国際フォーラム」は各国の報告者の報告を聞くだけに終わっていたのが、今回の「国際出版フォーラム」では、議論が噛み合ってきたといえます。その点では共通認識が深まったといえると思います。
 私自身は、座長からご指摘がありました「出版概念の変容」ということに関心がありました。韓国の金基康先生のご指摘にありました「出版が印刷の概念と並存することで、混乱を巻き起こしている」いう指摘に興味を持ちました。中国・韓国・日本では、出版の概念は「印刷と強く結びついている」概念といえますが、英語のpublishの元になったラテン語のpublicare(パブリコ)は「公にする。公表する」という概念であり、フランス語のpublier(ピブリエ)も「外に出す。明らかにする」という意味を持っています。
 日本では、出版は印刷との関連で考えられてきましたので、電子出版あるいはelectronic publishingという用語には違和感を持って接してきましたが、新しいステージを迎えたデジタル時代の出版では、違和感がなくなってきたといえます。
 出版は「源泉コンテンツである」という考えに私は賛同いたしますが、出版の特徴は比較的「発表しやすい」メディアでありました。いま、日本の政府はアニメを盛んに輸出することを奨励していますが、その基になっているのは、いうまでもなく「マンガ」です。日本には、たくさんのマンガ雑誌があり、そこから多くの作品が生まれ、読者を惹きつけているわけですが、果たしてインターネットから魅力的な作品が生み出されてくるのかどうかということに感心を持っています。 

南 爽純(ナム・ソクスン)(韓国出版学会会長)

 この「国際出版フォーラム」は、15回の歴史を重ねてきたわけですが、今回は、運営の仕方が大きく変わりました。報告の後の討論を重視された運営がなされたことです。
 4つのキーワードが座長から提案されました。きわめて正確に今回の「国際フォーラム」の全容が集約されていることに驚きました。そのことに関する私の感想を述べたいと思います。
 「出版概念の変容「ということは、非常に大切なことです。出版には、“本質と概念”があると思いますが、本質というのは、出版の持ってきる基本的な性質です。出版の本質は、人間の持っている思想や感情・知識・情報を広く公表するということであります。本質に比べ概念というのは、時代とともに変わっていく性質を持っています。
 時代が変われば概念も変化し、進化していくと思うのです。この時代の出版の概念には「アナログ出版とデジタル出版を包括する」概念でなければならないと思います。伝統的な印刷との深い関連を持っている図書や雑誌を含め、メディアそのものよりも出版の行為と結果としての出版物を見ようということであります。
 二つ目には、「読者または読書の変容」についてですが、重要なのは、消費者の立場です。4つのセクションの報告では出版社の立場からの報告が多く、消費者の立場からの報告があまりなかったように思えます。
 消費者のニーズや好み、消費者の利用するメディアを把握しないで、どんなに出版について議論してもあまり意味がないといえます。情報の送信者と受信者の本質的な関係はそこにあるわけです。その間にメディアが介在するわけです。情報の受け手の側からの観点が重要だと思います。
 そして3つ目「ビジネスモデル」です。出版という行為には、底辺で「経済論理」が動いているわけですから、きわめて重要です。著作者の持っている著作権の活用というカテゴリーを視野に入れたビジネスモデルの確立が重要なわけです。
 4つ目の「出版教育の変容」についてですが、出版の歴史というのは、結局、「出版物の歴史」になるわけです。出版教育は、出版の歴史の中での出版の本質と概念を体系的に教えることで出版産業との結びつきを教えることでなければならないと思います。
 そしてコンテンツも重要です。OSMU(ワンソースマルチユース)ということが語られました。出版で成功したものを映画など他のメディアにも活用していこうということですね。クロスメディアとは少し概念の違うものです。企画を立てた最初から、コラボレーションを通じて、複数のメディアでの利用を考えていくというのは重要なことです。 

李建偉先生(中国編輯学会副会長)

 私は中国編輯学会の代表として、2008年にソウルで開かれた「第13回国際出版フォーラム」に参加したことがあります。韓国の皆さんの歓迎を受け、日本の皆さんとも交流することができました。
 今回の国際フォーラムでは、いくつかの感想があります。まず、一つ目ですが、参加人数が増えたことです。ソウルのフォーラムには、5名の代表団しか参加できなかったのですが、今回は、13人が参りました。大学の先生方や出版社の方も参加しています。
 二つ目には、討論の範囲が広がったということです。出版産業の発展の問題や出版教育や人材育成の問題もありました。著作権をめぐる問題もありました。読書にかかわる調査の問題もありました。それらの問題につき中国・日本・韓国の専門家の意見が交換され、たくさんの教訓を得ることができました。
 三つ目には、それらの問題につき深い討議ができ、その方向性を見ることができました。まだ論点が定まっていないものも含めこれらの問題については、今後も深い討論を続けていく必要があります。出版産業や出版教育の問題についての非常にハイレベルな「国際出版フォーラム」だったと思います。この「国際出版フォーラム」が学問的にも現実の問題にも指導的な役割を果たしていくことができると思います。
 この「国際出版フォーラム」にさらに多くの他の国の専門家にも参加していただけるようにするのがいいと私は思います。そうできればますます意義深い討論ができると思います。出版業界の専門家・学者の皆さんからの発言も希望いたします。大学の研究者だけでなく、出版業界の専門家の方々のお話も伺えたらいいなと思います。
 今回の「国際出版フォーラム」に参加することが非常に大変な時期に、私たちが、この「国際出版フォーラム」に参加できたということが、中国の学者や専門家が、いかにこのフォーラムを重視しているのかがお分かりいただけると思います。ですから3カ国の専門家が今後も「国際出版フォーラム」を発展させて、さらに深い討論を重ねていくことを望んでいます。
 この「国際出版フォーラム」を準備していただいた日本の皆様方に心から感謝申し上げます。

*      *      *

 最後に、韓国出版学会会長から、2014年にソウルで「第16回国際出版フォーラム」を開催することが決定したと報告された。

 

デジタル時代の書店のビジョン
――フューチャー・ブックストア・フォーラム報告書から


日本出版学会は2012年5月19日に大正大学巣鴨校舎で,「2012年度 総会・春季研究発表会」を開き,特別シンポジウムとして「デジタル時代の書店のビジョン――フューチャー・ブックストア・フォーラム報告書から」を開催した。

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