第17回 国際出版研究フォーラム《開催挨拶》

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第17回 国際出版研究フォーラム 開催挨拶より


植村八潮
(日本出版学会会長)


 本日,第17回国際出版学術シンポジウム(The International Forum on Publishing Studies:IFPS)が,中国編輯学会のもと,開催されることを大変うれしく思います。日本出版学会の訪中団一同を代表して,挨拶させていただきます。まず,はじめに中国編輯学会会長 振省先生をはじめとする中国編輯学会の皆様,青島出版集団や来賓の皆様に,シンポジウムの開催にあたりましてご尽力いただきましたことを心から感謝申し上げます。

 世界的にみても,出版学を単一分野として,国家の代表的な出版学会と研究者が参加し,定期的に開催される国際学術会議は,この国際出版学術シンポジウムだけだと聞いております。

 第1回の国際出版学術シンポジウムは,皆さんご存じの通り,1984年に韓国ソウルで開催されました。この30年間を超える期間において,出版界は技術的な変革とグローバル化の大きな波を受けてまいりました。なかでもデジタル技術とインターネットによる情報流通は,グーテンベルクによる印刷技術の発明以来,600年間にわたって行われてきた印刷技術と紙の物流による文字情報社会に革命をもたらしております。制作・編集,出版流通,販売・購読のすべての出版段階において変革が起こっております。さらに創作においても,まったく新しい表現形式や手法が発明され,読書環境もスマートホンなどデジタルディスプレイによる読書が一般的になりました。

 一方において,このようなデジタル技術は,古典籍の分析,発見,デジタル・アーカイブの構築などにも利用され,出版研究の手法を大幅に向上させております。

 今ほど,「グーテンベルクによる印刷技術の発明以来,600年」と述べましたが,これには修正と補足が必要です。皆さんご存じの通り,紙は2世紀に中国で発明され,さらに7世紀には木版印刷が行われていたと聞いております。この木版印刷は韓国をとおって日本に伝来し,東アジア圏にすばらしい活字・出版文化を形成しました。現存する最古の印刷物の一つは,日本にあり,最古の金属活字本は韓国で印刷されました。

 最も古い出版文化を共有し,最先端のデジタル技術で世界をリードする,中国,日本,韓国の出版研究者が一堂に会することは,出版研究において最も素晴らしい組み合わせと言えるのではないでしょうか。

 人類の歴史においては,未だ解決に至らない紛争があり,政治的な衝突や経済的な競争もあります。一方において出版文化の民間交流は友好のシンボルです。出版研究の世界に国境はありません。今日のシンポジウムが大いなる成果を私たちにもたらしてくれることを期待しております。