アマゾン「バックオーダー発注中止」問題の波紋を考える 星野渉(2017年6月21日)

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■出版流通研究部会 開催要旨(2017年6月21日)


2017年、いま出版産業では…
「改めて考える出版流通の機能と現状」
=アマゾン「バックオーダー発注中止」問題の波紋を考える


星野 渉 (会員、文化通信編集長)

 

1.アマゾンのバックオーダー停止

 バックオーダー問題が大きくニュースに取り上げられたが、理解するためにはアマゾンの発注システムを整理しなくてはならない。アマゾンの発注は「カスケード(cascade:滝)」と呼ばれる方式で行われている。第一カスケードの取引先から納品できない注文を、滝が流れ落ちるように第二・第三へ流す形式である。アメリカでは第一カスケードは出版社だが、日本の場合は取次(多くの商品については日販)が第一カスケードである。
 今回問題になったバックオーダーとは、非在庫品の商品を次のカスケード(例えば別取次や出版社など)に流すのではなく、取次に対して非在庫商品の取り寄せ注文を行う発注のことを指す。
 アマゾンとしてはバックオーダーによる「引当率」が低く、機会損失につながっているということで今回の判断を行なったと主張している。「引当率」そのものについては、アマゾン側と日販側の主張それぞれに具体的な根拠が示されていないので実態は定かではないが、いずれにせよアマゾンが出版社に対して直接発注を提案する状況となっている。

2.書店と出版社の直取引

 アマゾンがまた新しい動きで日本の出版流通へ揺さぶりをかけてきているかのようにも見えるが、実際には書店(出版物を扱う小売業と考えればアマゾンも書店である)と出版社が直取引を行う動きは年を追うごとに増えている。
 紀伊国屋が『職業としての小説家』の大半を買い切り仕入れしたことは記憶に新しく、TSUATAYAも2017年の方針発表会で、大きく舵を切ると宣言を行っている。

3.取次システム崩壊と競争環境の変化

 この問題は、単純にアマゾンや一部書店の新しい動きということではなく、これまで日本の出版流通を支えてきたインフラが大きく変化してきている大きな流れの中に位置付けられる。実際、これまで出版流通を支えてきた取次は三位以下が事実上経営破綻に追い込まれている。繰り返し述べられていることではあるが、計画可能で効率的な雑誌の大量流通を軸に組み立てられ、ある意味その儲けを効率の悪い書籍に回していたシステムが、雑誌市場の縮小とともに限界を迎えているのだ。
 出版社も書店も、取次に対しての批判やシステム改善の要求は行ってきたが、その一方で取次システム以外を考えず、そのシステムに依存してきたといえる。今日取次のタガが緩むことで、取引方法が流動化・多様化することは当然と言える。買切取引や直接取引もその一つでしかない。こういった多様な動きに対応していくことが、これからの出版社・書店に求められることになるだろう。

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 星野会員は報告の冒頭で「アマゾンが日販へのバックオーダーを停止するという申し入れが、ニュースでも大きく取り上げられた。しかし出版学会として考えるには、エビデンスベースで、さらに単に対アマゾン問題としてではなく考える必要がある」と述べたが、まさに日本の出版流通が取次への依存から否応なく脱却せざるおえない状況を明らかにする報告であった。出版流通研究部会としては、出版社・取次・書店が従来の方法にとらわれない新しい動きをとる時代に、次世代の出版流通がどのように作られていくかも注目していくべきであろう。

会場: 日本大学法学部三崎町キャンパス 10号館7階1072講堂
参加者: 52名(会員18名、会員外34名)