「雑誌の再生とデジタル化を考える」梶原治樹(2016年3月11日)

<「出版流通研究部会/出版技術・デジタル研究部会」2016311日>

雑誌の再生とデジタル化を考える

梶原治樹

 

1. 出版統計に見る雑誌の現状

出版科学研究所によると、2015年の雑誌販売金額は7801億円となり、前年比8.4%と調査開始依頼最大の落ち込みを見せた。

出版市場のピークと言える1996年から現在までの雑誌販売金額をジャンル別に比較すると、定期誌(月刊誌・季刊誌等)の販売額は96年当時の43%、週刊誌は37%まで一気に落ち込んでいる。一方でムックは同年比69%、コミックスは89%と堅調であり、雑誌不振とは「定期刊行物不振」であるということが顕著である。

2015年~2016年にかけては、栗田出版販売の民事再生法適用、太洋社の破産申立手続と大きな“事件”が相次いでおり、残された大手取次の経営状況も厳しい。雑誌市場がこのまま低迷を続けると、私たちが当たり前のように使っている出版流通インフラが瓦解してしまう危機が目の前に迫っている。

 2. 雑誌販売手法の最新動向

 雑誌が黙っていても売れていた時代において、雑誌流通に関わる各者は、いかに発売日に雑誌を正確かつ効率的に届けるかに気を払っていればよかった。しかし、雑誌離れが深刻化する現在では、売り上げを維持・獲得するための様々な販売手法がとられている。

 ひとつが「リサイズ版」と呼ばれるひとつの雑誌を複数の大きさで販売する形式や、雑誌の付録の「あり・なし版」を同時に出し、読者に好きなものを選んでもらう形式である。女性誌等では「もち運びやすい小さな雑誌がほしい」「付録はいらないから安くしてほしい」といった要望に応える形となっている。

また、コンビニエンスストア等における「流通限定の付録」をつけるケースや、商品と雑誌をお得な価格でセットにして販売する「BOX型開発商品」、紙の雑誌を買うと電子コンテンツの特典がつくサービスなど、雑誌の特典にも様々な形式のものが誕生している。

さらに、時限再販を活用したバックナンバー等の値引き販売や、書店店頭における店頭お取り置き定期購読の推進など、取次会社も積極的に関わり実績を挙げている施策もある。日本雑誌協会も2014年より「雑誌価値再生委員会」という特別委員会を立ち上げ、新たな販促・プロモーション企画を実施している。

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梶原会員の報告は、「これらの販売手法の多様化は、出版社・取次会社・書店の作業負担を増やすことは間違いない。しかし、多様化する読者のニーズに応えていくために、今後もさまざまな現場での工夫が求められていくことになるだろう。」述べ、前半の報告を終えた。後半の「雑誌のデジタル化」に関する部分は、「出版技術・デジタル部会」の報告をご参照ください。

参加者:33名(会員19名、一般14名。会場:八木書店会議室)

(文責:出版流通研究部会)