出版流通研究部会「出版文化交流と翻訳の仕事」

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〈出版流通研究部会報告〉2015年9月25日

出版文化交流と翻訳の仕事

舘 野  晳

(出版文化国際交流会理事) 

1. 出版文化交流で実際にやってきたこと   

  (1)翻訳などを通じる本づくり

  (2)情報提供・伝達

(3)出版関係者との付き合い

の3つに分けることができる。 

2. 日本と韓国、「文学」書の翻訳出版状況 

文学に関する日本書は、19~2009年までに3604作品が翻訳出版されている。 

日本で翻訳出版された韓国の文学関係書は、1945~2014年の69年間で759点あり、平均すると年11点程度の割合になる。

(1) 1945~59年に刊行の36点のうち「北」系が26点、「南」系は10点。「南」は金素雲の翻訳・エッセーが5点、張赫宙の小説が4点

(2)60年代も「北」系が23/32点と優勢。65年『ユンボギの日記』、66年『アリランの歌ごえ、現代南朝鮮詩選』、67年『歳月、現代南朝鮮小説選』、68年、柳周鉉『朝鮮総督府』など、韓国作品が紹介され始める。

(3) 70年『金芝河詩集』以降、金芝河作品の紹介が相次ぐ(11点)。『現代朝鮮文学選』(2巻、73~74年)は日本人による最初の翻訳。

(4) 80年代、84年『朝鮮短篇小説選』(上下、岩波文庫)、88年『韓国短篇小説選』、作品集がいくつか刊行され、多様な作品を読む機会が増える。

(5) 92年「韓国の現代文学」(全6巻)柏書房、99~2000年『太白山脈』(趙廷来、全10巻、ホーム社)など、大型企画も見られるようになった。

(6)2000年~、WC共同開催(02)/「冬のソナタ」の放映開始(04)による韓国への親近感の高まり / TVドラマ・映画の原作、リメイク本の氾濫 /「朝鮮近代文学選集」『無情』(05、平凡社)の刊行開始/ クレイン、CUON(「新しい韓国の文学シリーズ」11年~)、かんよう出版などのスタート。新しい感覚の作品紹介が相次ぐ。 

3. これからの課題

韓国の場合に比べると、日本における韓国文学の翻訳紹介は貧弱であるが、それでも1945年以降の刊行リストを点検してみると、かなりの水準まで翻訳出版がされていると判断してもいいと思われる。しかし、韓国近現代文学史を飾った有名作家の作品が漏れなく紹介されているかと、反問されれば遺漏もかなり目に付く。ここで今後の課題として希望したい点を述べておきたい。

第1に、既刊の飜訳書を読みたいときに、読める状態にしてほしい、ということだ(既刊品目に対して陳列・蔵書品目が少なすぎる)。これは出版社と書店、そして公共図書館に対する希望である。

第2に、出版社が韓国の文学作品を出しやすい仕組みを作ってほしい点である。現在、いくつか機関が翻訳・出版の支援をしているが、これらの内容をさらに充実させて、刊行にともなうリスク回避の手段を講じてほしい。

第3に、翻訳の質を高めるための努力である。長く韓国文学の日本語訳を読んできたが、翻訳のレベルは決して高くはないと思われる。相互研鑽の場を設けて精進することが望まれる。

*     *     *

最後に、韓国文学作品に関する情報交換の場が必要とされる点である。東京には、「K-Book振興会」という民間有志団体が、韓国の出版情報を出版社やメディアにつなぐ仕事をしているが、これが思わざる成果を生んでいる。出版社からも歓迎されており、メディアに紹介される機会も多くなった。まだ、試行錯誤の段階であるが、これをステップにさらなる発展を目指していきたい。

(文責:出版流通研究部会・参加者13名・会場:八木書店)

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