出版法制研究部会 発表要旨 (2005年3月29日)
コンビニにおける成人雑誌規制の現状と課題
東京都青少年条例改定に伴う,いわゆる「有害」図書の販売方法の変更とその影響をテーマにした3回シリーズの3回目。出版社側(日本雑誌協会),規制当局(東京都)に引き続き,流通側,特にコンビニエンスストア(CVS)での現状について日本フランチャイズチェーン協会の伊藤廣幸CVS担当部長に概略下記の通り話を伺った。
CVSは日本では1970年代半ばに登場し,その後一貫して売り上げを伸ばし続け,現在では売上高で百貨店・GMS(総合スーパー)に迫っている。出版物の流通チャネルとしても,出版物全体の売り上げの約20%をCVSが占めている。出版物全体の売り上げが下降気味であるのと同様にCVSでも売り上げは低下傾向にあり,各社ともその対策に苦慮しているところでもある。CVSの販売品目別の売り上げでは雑誌・新聞は主要カテゴリーの一つであり,売り上げが低下傾向であってもその位置付けは変わらない。実際に,雑誌に変わる売り上げを確保できる商品も現在はなく,売り上げを伸ばすよう各CVSチェーンとも様々な取り組みをしている。
成人向け雑誌は,各チェーンとも区分陳列している。CVSでは,もともとジャンル別に棚が分かれているが,成人向け雑誌コーナーは,はっきりと区別できる仕切りをつけている。不健全指定された雑誌は扱わないことにしており,いわゆるグレーゾーンの雑誌は各チェーンがそれぞれチェックしている。店のオーナーが成人向け雑誌を扱わないと決めるケースも増えている。しかし,あまりに過激だったり犯罪誘発性があるものは別として,単純に成人向け雑誌を削減しようと考えているわけではない。あくまでも子供が手に入れられないよう,区分陳列のほか,シール留めについて出版界に要請するなどしてきた。現在はシール留めへの評価を高めるために,シールに色を付けたり,大きくしたりするよう出版界に申し入れている。また,2004年7月1日に成人誌取り扱いのガイドラインを実施。指定図書・表示図書は扱わない,それ以外のグレーゾーンの雑誌はシール留めしていないものは扱わない▽区分陳列する▽サンプル・ディスプレイ(店外向け展示)に使用しない▽未成年者(18歳未満)の購入・閲覧防止に努め,年齢確認を徹底する――などを決めた。
その後,質疑を行い,CVS業界の自主努力にも増して,行政側の要求が厳しくなっているのではないかなどの議論があった。