青少年条例改定と図書規制の現状  (2005年2月8日)

出版法制研究部会   発表要旨 (2005年2月8日)

青少年条例改定と図書規制の現状

 東京都のいわゆる青少年条例が2004年春に改定され,夏から実施されている。その前後から,いわゆる「有害」図書の販売方法が変更されていることを受け,当部会は規制当局,媒体,流通の三者からそれぞれ担当者を招き,これまでの経緯と現状について話を伺うことにした。
 その初回にとして今回は,日本雑誌協会から渡邊桂志氏を招き,出版業界としての自主規制の取り組みの経緯と,東京都をはじめとする各自治体による規制への対応について話を聞いた。
 出版業界としては,1964年の東京都青少年健全育成条例施行に前後して1963年に出版倫理協議会(出倫協=日本雑誌協会,日本書籍出版協会,日本出版取次協会,日本書店商業組合連合会で構成)を設置し,1965年には自主規制についての申し合わせを取り決めた。取り決めでは,東京都青少年健全育成審議会で3回連続または年間で5回指定を受けた雑誌類に,18歳未満には販売できない旨を記した帯紙を付けることにしている。都の指定を自主規制の拠り所としているのは,有害図書類を包括指定(基準に照らし合わせ自動的に指定)する他の道府県と異なり東京都は,個別指定の方針を採り,審議会を通す手続きを行うなどの理由からである。出版界としてはその後1991年に成年コミックマークの表示,1996年には成年向け雑誌マークの表示を始めるなど,青少年が過激な図書・雑誌に触れないよう,成人向け図書・雑誌の区分陳列強化を図っている。
 2001年からは,東京都の区分陳列義務化に合わせ,出倫協に出版倫理懇話会,有識者3人を含めた第三者機関「出版ゾーニング委員会」を設置し,「出版ゾーニングマーク」表示を用いた区分陳列の徹底を図った。出版ゾーニングマーク等の表示は,コンビニエンスストア業界の判断基準にもなっており,表示がある図書は取り扱われないことになっている。
 2004年の都条例改正に当たっては,当初,都も包括指定への移行を検討していた。出版界の自主規制システムへの影響もさることながら,包括指定の実効性への疑問が提起され,従来通りの個別指定の方針が維持された。同年の改正では,都の指定図書類について都が定める出版社に包装義務,書店に区分陳列義務が課せられ,30万円以下の罰金が定められたほか,出版界の自主規制マークが表示された図書類(表示図書類)についても,指定図書と同様の努力義務が課せられた。
 こうした都条例改正の動きとともに,コンビニ業界からの要請もあり,出版界では新たな自主規制を検討した。その結果,ビニール包装,ヒモ掛けに準じる措置として,内容が表示図書との間のグレーゾーンにある図書についても,小口を3cmのシール留めすることにした。シール留めには1冊あたり20~25円の経費が掛かるものの,懇話会非加盟の出版社でも採用されるようになっている。出版界としては,この措置により店頭での内容確認が困難になり,青少年の目に触れないというゾーニングの目的が図られると考えている。
 以上の報告に対し,シール留めによる自主規制の結果,かえって表紙や内容が過激になるのではないかとの質問があった。これに対し概略,表紙については流通側の要請から過激にはなりにくいほか,内容についてはシール留めの目的は第一義的にはゾーニングにあるので,極端に過激なものであった場合は刑法上のわいせつの問題となり,今回の自主規制の目的とは次元が異なる,との回答があった。また,出版規制の在り方についてなど,活発な議論が行われた。